●危うく免れた振り込め詐欺
広島在のAさん(主婦)が、同人誌に「親バカ」という題でエッセイを書いておられます。新手の犯罪、振り込め詐欺の標的にされ、あやうく被害に遭うところでした。作品はその体験記で、犯人とのやりとりの様子がとてもリアルに綴られているので、これは私たちも知っておいたほうが良いのではと思い、許可を得てここに転載しました。(駄目男も同じ同人誌のメンバーです)
■「親バカ」
九月初旬の夜、東京の息子から電話があった。正月に帰省して以来の音信である。
「どうしたの、声が違うじゃない」と言うと,このあいだの大雨に濡れて風邪をひいたと咳まじり声で答える。用件は携帯電話の番号を変えたので知らせておこうと思って、とそれだけである。甥のしゃべり方に似ているというと、彼は元気かと問う。しかし、どうにも気になる声である。大丈夫、すぐに治るからと電話は終わる。よく風邪をひいて熱を出す息子である。ま、仕方ないか、あの雨では、と夫と話し納得する。
翌日の昼過ぎに、また息子から電話がかかってきた。「お父さんは?」と聞くので驚く。これまで相談事は全て母親経由だった。何?と思う。出かけているというと、がっかりした様子をみせる。「何なの?」「ちょっと相談事ができて・・」と口を濁す。
「実は会社の先輩に誘われて、コピー機を販売する副業を始めたんだけど、結構うまくいって、今月半ばに代金がまとまって入ることになってるんだけど・・。はじめに資金がいるので、会社の金を流用してしまって」
「今日、急に監査が入ることになったので困ってしまって、仕方ないから部長に相談したら、半分立て替えてくれるって言うんだけど、あと百二十万足りなくて・・」「クビになるだけではすまない話なので、お父さんに頼もうかなって思ったんだけど」
「二時までに穴埋めしないと大変なことになるので、いくらでもいいから送ってもらえないかなあ・・」と咳まじりの声で言う。
あれこれやりとりした後、何故か防衛反応が働いてしまい「実は、お母さんの給料は全部あなたへ仕送りしていたのよ。貯えもなくなってしまったから、こんな大金は送れそうにないの。ごめんなさい」と答えた。
「あ、大変だったんだ。それじゃお小遣いもないじゃないか。ごめん、急にこんなこと言って。何とか考えてみる。結果はまた電話するから」と申しわけなさそうに言う。
うちの子に限って、というより息子の性格からして考えられないことだった。 とはいえ、十余年も独り暮らしをしている息子である。今ひとつ自信がもてない。本当は話を信用して送金したほうがよかったかもしれない。みすみす犯罪者にしてしまったかもしれない。いや、携帯電話を落としたのかしら。いや、もっと悪いことに巻き込まれているのか等、半信半疑のまま落ち着かない気持ちで夕方を迎えた。
夕食時、夫に話すと、当然送金したと思ったらしい。慌てて息子の携帯へ電話すると監査は明日になったという。夫が明朝息子の口座へ入金するというと何故か難色を示す。
昨日の今日で変よね、と呟いたら、上の息子が元の番号へ電話することを勧める。それもそうだ、と早速かけてみる。
風邪声でない下の息子がちゃんと出た。 (了)
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文にはありませんが、最初の電話のとき、ニセ息子は○○だけど・・と正しい名前を名乗ります。これが信、不信、の判断を錯乱させます。名前を言ってるのに、即、あんたニセでしょ、と言いにくい。(名前や電話番号はなんらかの名簿で情報を盗んだらしい)このあとは犯人のプロ並みの演技がものをいって、運の悪い人は易々と大事なお金を貢いでしまいます。Aさんの場合は、上の息子さんの機転で救われました。
報道によれば、全国各地で、一日一億円のペースで被害が発生しているそうです。これは警察が把握した金額ですから、被害届けを出さず、泣き寝入りしたケースを含めるともっと多額になるでしょう。
最近は被害防止のPRが効果をあげつつありますが、犯人も負けじと、より高度なテクニック、演技力を身につけて「親バカ」を狙います。ご用心下され。
■産経ニュースが報じる今年の被害状況(削除の場合あり)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080930/crm0809302020030-n1.htm



