FC2ブログ

読書感想文

読書感想文
02 /19 2021
 

アンデシュ・ハンセン「スマホ脳」を読む
 著者はスエーデンの精神科医。スエーデンは生活水準でも国民の教育水準でも常に世界のトップレベルを保つ先進国で知られる。そんな国がスマホの急速な普及とともに国民に不幸をばらまいてるという。 現在、スエーデンでは大人の9人に一人が精神の不調で「抗うつ剤」を使用している。症状は「眠れない」といった軽いものから「孤独に苛まれる」という深刻な心の不調まで多様で、その原因のほとんどが「スマホ依存症」即ち、一日中スマホを手放せない中毒状態に陥ってることに起因する。(著者自身もヘヴィーユーザーみたいだ)

 なぜ、スマホの積極的利用が精神的不調を招くのか。著者の説明では、人間の脳は何千年、何万年もかけて少しずつ進化してきた。「環境に適応することで絶滅を免れる」。毎日、毎日、殺すか、殺されるかの生活。相手は猛獣だったり、人間だったり、天災だったり・・この試練の繰り返しである。半分くらいは10歳までに死に、長くても30歳くらいしか生きられない。この「環境に応じてゆっくり進化する」状態は現在も変わっていない。苦しい経験に学ぶことで少しずつ進歩してきた。おかげで、天災や感染症などの災厄に対しても時間をかけて対処する術を学んだ。

 しかし、近代~現代の科学的進歩はスピードが早すぎて人間の脳がついて行けない。機器がハイテク化しても、脳は原始人以来のDNAを引き継いでおり、変化に対処できないでいる。
 さらにマズイことに、ドーパミンという脳内の快楽誘導物質がスマホ中毒を促す。ほんの20~30分、スマホをオフにするだけでイライラしてくる。ドーパミンが「おい、おもろい情報入ってるぞ、見たいやろ、ONにせんかい」とそそのかす。で、四六時中開けていないと気が済まなくなる。その結果、不眠症や疲労感、食欲不振などが起きて体調を悪くする。

 スマホ中毒は子供にも広がりつつある。その弊害が指摘されてるにもかかわらず、日本では小中学生、一人に一台タブレットをもたせて教育に役立てるというカリキュラムを進めているらしい。マイナスよりプラス効果の方が大きいと判断しての採用だと思うが、本当に有益なのか。最近ではスマホの長時間使用による視力の低下も問題になっている。

 皮肉なことに、スマホなど最先端のツールやアプリを開発した人間が自身はそれらがドラッグとおなじ悪影響があると考えて使用をセーブしていることだ。スティーブ・ジョブスやビル・ゲイツといったトップの開発者が自分の子供には使用させないという。ジョブスは家に帰ればアイパッドなんかそばに置きたくもないシロモノだと言っていた。ビル・ゲイツは子供が14歳になるまでスマホの使用を禁じていた。フェイスブックのあたらしいアプリを開発したJ・ローゼンステインはそのビジネス成果を認めつつ、悪影響の大きさにも気づいて自らは使用を制限した。案の定、SNSの普及は便利さとともに多くの人に不幸をばらまいた。

 自制心のない人間はスマホ中毒から脱却できず、最先端のテクノロジーを駆使して社会の下層階級を目指してるようなものだ。パチンコ中毒人間がようやく減少してきたと喜んだら次は「スマホ中毒」が大量発生した。パチンコと違い、子供から年寄りまで年齢制限がないぶん、悪影響の度合いが大きい。しかし、そんな問題知ったこっちゃないと、任天堂やカプコンといったゲームメーカーは次々と新しいソフトを開発して「愚者の楽園」づくりに力を注いでいる。批判に押されて自己規制をはじめたパチンコ業界より悪質なビジネスかもしれない。スマホ中毒人間はパチンコ中毒人の悪口を言う資格はない。(2020年 新潮社発行)


スマホ脳 


スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

 dameo

■10年続けた<快道ウオーキング>を改題しました。
■《手づくり本》の研究は、大事なことは紙に記録しようという、アナログ爺のレジスタンスです。お問い合わせは【拍手ボタン】押してコメント欄からどうぞ。内容は非公開です。
■下記のカテゴリーが趣味をあらわしています。
■ニックネームはdameo(丸出駄目男)です。
■1939年大阪生まれ