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読書感想文

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02 /11 2021
 

佐渡 裕「僕はいかにして指揮者になったのか」

いっぺん、演奏会に来いひんか?
 ・・なんちゃって、若ぶってるけど、1961年生まれだから、もう還暦ではありませんか。「ボク」は昔のこと、今やオッサンのさなか、そして、あっという間にじいさんになりますぞ。でも、じいさんになっても「巨匠」のイメージは似合わないなあ・・。
 このタイトルで生真面目タイプの指揮者が著せばイヤミ、キザ満点の本になってブーイングものですが、佐渡さんが書けば許される、オモロイ、という本になります。余計な話ですが、小見出しの「演奏会に来いひんか」は京都弁(彼は右京区生まれ)です。大阪弁では「演奏会にけえへんか」神戸弁では「演奏会にこーへんか」となります。人の出入りの激しい大都市なのに、この「きいひん」「けえへん」「こーへん」の使い分けは今でもしっかり残ってるのがおもしろい。

 で、本書は音楽の本にしては珍しく関西弁で書かれている。(正しくは関西弁まじり)のみならず、指揮者にして佐渡の師匠、レナード・バーンスタインも関西弁でしゃべるのだ。最晩年になっても酒と煙草をやめられなかったバーンスタインは弟子の佐渡に言う。「オレが死んだら早すぎるよな。でも、煙草はやめられへんし、酒もやめられへん。でも、ユタカ、オレと今から禁煙せえへんか」(216頁)てな具合。

幸運七分に不運三分?
 指揮者に限らないが、アーティストの出世物語は努力の成果だけでなく、運の良さも大きく関わる。佐渡裕の出世物語は本書を読む限りではコツコツ努力の成果より運の良さが大きくプラスになってるように思える。その大半が幸運な人との出会いである。小澤征爾やバーンスタインとの出会いもどこかラッキーに恵まれている。出世途上において実力以上に評価されていたのではと勘ぐりたくなるくらいだ。そのベースに「人に好かれやすい」性格があると思う。アカデミックな教育を受けなかったぶん、エラソーな態度をする資質もつくれなかった。

 佐渡が指揮する演奏会にはオペラを含めて五、六回しか行ったことがないので批評めいたことは書けないけど、一番の功績は関西でオペラ公演を定着させたことでせう。オペラファンなんてかいもくいない関西で10日間の公演を企画、成功させたのは指揮者、佐渡裕ではなく、プロデューサー佐渡の腕前。こんな大胆な企画ができる人は他にいない。のみならず、初心者のためにホールでレクチャー講演までサービスする。その心意気はまさに「いっぺん、演奏会に来いひんか」であります。

 他に、佐渡の企画で素敵だと思ったのは、子供たちで編成する「スーパーキッズ オーケストラ」の演奏会だった。弦楽アンサンブルだけど、安物のバイオリンばかりなのに実に美しい音色とメリハリの効いた音づくりだった。小中学生でも、丁寧に、かつ厳しく訓練すればこんなに魅力的な演奏ができるのかと感心した。

 年末の名物行事になっている「一万人の第九」の指揮も長く務めている。アーティスト+ディレクター的センスが求められる催事だから、はまり役かもしれない。(平成22年 新潮社発行(文庫版)


佐渡



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 dameo

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