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読書感想文

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01 /25 2021
 

小谷野敦「文豪の女遍歴」を読む

 正月早々、楽しい本に出会いました。明治以後、昭和時代はじめまでに生まれた作家約60人の女性遍歴をセキララに書いている。森鴎外、島崎藤村、芥川龍之介、太宰治・・そうそうたるメンバーが女性問題をどう切り抜けたか。メンバー表を見ると、一流作家の7~8割くらいは問題を起こしていて、トラブルなしなのは少数にとどまる。夏目漱石もいろんな人が調査したが、まあ、問題ナシとされた。(さりとて、鏡子夫人との仲が円満だったとはいえない、とかなり疑われている)


 一般人と違って問題が取りざたされやすいのは、作家はスキャンダルでさえ作品創作の糧にできることで、スキャンダル=悪、と評価しにくい面がある。谷崎潤一郎なんか実生活の女性問題を次々小説のネタに取り入れる名人?で「細雪」「鍵」「瘋癲老人日記」「春琴抄」などの名作をものにした。自分の醜聞を文学作品に「変換」する名人だったと言えます。じっさい、女性問題で谷崎をマイナス評価する人は少ない。


 その点、太宰治は女たらしを糧にしつつ、処理の仕方がヘタクソだった。自殺や心中の失敗を重ね、恥をさらした。だからといって、世間全てが太宰治大嫌いというものでもない。どうしようもない駄目男と認めつつ、作品は好きというファンが多い。醜聞とは関係の無い優れた短編をたくさん作ったことが「女たらし」のイメージを割引きしている。
 

 川端康成は失恋の傷を抱え、やけっぱち気分で田舎の芸者をモノにした。それが「雪国」のヒロイン、駒子に仕立てられ、揺るぎなき名作と評価されて後にノーベル文学賞受賞に至るのだから「才能」というしかない。湯沢温泉のB級芸者、小高キクさんにしたら、さりとて妻にしてもらえたわけでもなく、小説の素材でしかなかった。本書によれば、川端康成は合計10人くらいの女を愛人にしたらしい。ほとんどが水商売の人だが、むろん、正妻もいた。いちいち嫉妬なんかしてられなかったにちがいない。川端自身は誰にも看取られない自死を選んで旅立った。


 読み終わって、60人のなかで一番のワルは誰かと考えたら、島崎藤村ではないか。本人も性悪は「血筋」と認めていたふしがある。ドジな太宰治や谷崎潤一郎のように「笑って許す」気にはならない。血族間の人間関係の醜さ、陰湿さは耐えがたいものだったと思われるが、藤村自身も被害者ではなく加害者側だったことで救いがない。女性に対しては卑怯、無責任な態度を通したことも印象を悪くさせる。しかし、歴史に残る「文豪」であることも変わらない。優れた文学作品のウラにどれだけ醜悪、悲惨、滑稽なドラマがあったかを知る意地悪な本でもありました。(2017年 幻冬舎発行)

表紙 文豪の 



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 dameo

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