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犬町・猫町情報



(73) へし(菱の方言)の実

 この辺の池ならどこでも自生している水草の実である。秋も深まり実が生ってくると家庭の盥の五倍ぐらいはありそうな盥舟で菱取りに出かける人がいる。盥から身を乗り出し、菱草を手繰り寄せては葉の裏に生っている実をもいでまわる。いい加減たまったところで町へ持ってきて「へしー、へしーっ」と売りに廻る。それを二升とか三升とか買って 茹でて食べる。母が「今夜は夜なべにしょうか」と言えば夜食に菱をたべようという意味で、やったー、である。


へしは名の如く菱型で幅一寸あるかなしかの平べったい実で、両横には鋭い棘があって気を付けないと痛い目に合う。茹であがった「へし」を出刃でポンポンと輪切りにし、ミシンのドライバー(これが最適)かそれに似たようなものでほじくって食べる。実は純粋な澱粉で色は真っ白で、味もなんにもない。実の外側の薄皮に渋みがあり、その味が実にも微かについている。決しておいしい物ではない。しかし おいしくないから飽きがこず、一度食べ出したらなくなるまで止められない。冬の夜の大きな楽しみの一つだったが戦後は「へし売り」が来なくなった。「へし」を取って売るぐらいでは稼ぎにならないらしい。


もう一度食べたいものだと話していると、それを聞いた嫁がネットか何かで探して佐賀県から取り寄せてくれた。確かに菱には違いないのだが一寸イメージのものとは違って両横の随分大きなものだった。
 以上は「真べし」の事で、この他に「鬼べし」もある。こちらはサイズも一回り大きい上に左右表裏に4本の角(棘ではない)があって甚だ割りにくく且食べにくい。しかしこちらの殻だと思うが何かの薬になるらしく、漢方薬の店先に干してあるのを見たような覚えがある。


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