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犬町・猫町情報


小学生時代の思い出    作:DH
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(70) 風呂屋

 風呂屋。銭湯ではない。あれは東京語。我が家から半町ほど西に、みんなが「ちょうざ」と言っている風呂屋があった。どんな意味か、どんな字を書くのか未だに分からない。小さい時「うかじのばあ」(よく遊びに行った家のお婆さん。多分その家の屋号が宇賀治だったのだろう)に連れられてこの風呂屋へ行った。勿論、女湯の方だ。これは子供にとっては災難だった。なにしろ湯船に入ったら百まで数えろと言う。年寄りはなかなか温まらないが、子供は違うという事が分らないらしい。五十も数えればこちらはもう充分茹だっているのに、まだまだと言う。七十、八十となってくるともう地獄の責め苦である。それでも出させてくれない。やっと上がってからも耳の後ろやら足の指の間まで、それこそ徹底的に洗われる。もう勘弁だ。


もう少し大きくなると、一人で今度は男湯の方に行く。何をするかと言うと、まず眼を閉じ息を詰めてズブズブと湯船の底まで沈み、しゃがみこむ。息がつづかなくなってプアーっと湯から出ると今度は湯船の縁の腰掛に坐って何をするでもなく、ぼやーっとして過ごす。それで終り。まず洗わない。これで家を出てから帰るまでが約30分。いつもこんな具合だった。


この風呂屋は割と大きな風呂屋で、真四角な浴室の真ん中に真四角な湯船があり、浴室の床も浴槽の縁もすべて花崗岩作りというと、すごく豪華に聞こえるが、惜しい事に湯が汚なく、白く濁っていて底が見えない。理由もはっきりしていて、いつも湯船の七、八割しか湯を入れないからだ。しかし、風呂と言えばそこしか知らないから別段汚いとも思わず、こんなものだと思っていた。大人たちも文句も言わずに入っていたから、恐らくほかの風呂屋も似たり寄ったりだったのかも知れない。風呂代は小人で2銭。餡パンも2銭だったからよく覚えている。


風呂屋のイメージ
道明 風呂屋 






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