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読書と音楽の愉しみ



●久松達央著「キレイゴトぬきの農業論」を読む

 繊維メーカー「帝人」で営業マンだった著者が、知識も経験もないのに農業に首を突っ込み・・といえば、なんだか異事業参入の苦労話を想像しますが、そうではなく、至って醒めた感覚で農業を語っている本です。農業にロマンを抱く人には冷や水を浴びせるような物言いもある。


著者は基本的に有機農法、無農薬栽培で野菜をつくり、個人契約者と料理店を対象に約50種類の野菜を販売している。農地は3ヘクタール、スタッフは6人という小規模経営です。農業のプロだった人は一人もいないという素人農家ですが、アタマを使えば素人でもなんとかなる、の見本でせう。逆に、情熱だけで農業を起業してもほとんどは失敗します。


自ら有機農法を取り入れながら、こう書く。
・有機だから安全・・は間違い
・有機だから美味しい・・も間違い
・有機だから環境にいい・・も間違い

と、いささか薄情な言い方ですが、説明を読めば納得できます。有機農法は正しいなんてキレイゴトに乗せられてはいけない。実際、この「神話」を信じて有機農法に取り組み、あえなく廃業した例はいっぱいある。


著者の経営方針は「野菜の美味しさのわかる少数の人に、値段は高いが最高の品質の野菜を買ってもらう」こと。つまり、お客さん全員が常連さん、顔見知りです。ええ加減な商品を届けたら「もういらん」となる。農業におけるスキマビジネスと言えます。経営の安定という点ではメリットがあるけど、これでは規模的に成長できない。その打開策として、インターネットによる販売もはじめた。将来のビジョンについては模索が続くが、仕事自体は面白くてやる気満々のようであります。


著者のような農業への新規参入者に対する政府の施策についても、なるほどと思う意見をたくさん述べている。既存の農家への手厚い保護には批判的で、農家自身も意識改革が必要だと説く。いちいち納得できる話で、著者は将来農業ジャーナリストとして活躍できるのではと思うくらいです。(2013年 新潮社発行)


ついでに駄目男のアイデアを一つ。以前に書いたような気もするが、農業人口が減るなか、対策の一つとして、全国の受刑者を農業に従事させてはどうか、という案です。現在の刑務所は都市部に集中しているが、一部を地方に移す。耕作放棄が進む農村に「農園のある刑務所」をつくる。フェンスで囲った50㏊くらいの土地にムショと農園をつくり、まずはムショでの自給自足を実現し、漸次、生産量を上げて外部への販売も行う。利益が出たら、受刑者個人へ還元して出所後の生活資金とする。


ムショの作業場で内職的な仕事をするより、畑や果樹園で野菜や果物を育てるほうがずっとモチベーションが高まると思いますよ。刑を終えた出所時に技術をマスターしていたら指導員として就職もできる。これは再犯防止に役立ちます。近隣に民間で農園を起業して彼らを受け入れることもできる。仮に、全国で1000人くらいの適格者がいたら、農業生産額のコンマ何パーセントかは請け負うことができるかもしれない。


と、絵に描いた餅を述べましたが、人口減少、人手不足の時代に、ムショのおじさん、にいさんに活躍の場をつくることで農業の担い手になってもらう。しかし・・であります。この明るいムショ暮らしをしたくて罪を犯す輩が必ずでてくる。捕まったとたんに「あの~、〇〇県のムショに行きたいのですが」と。


キレイゴト 






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