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閑人帳

●「死刑廃止論」はなぜ支持されないのか(その2)

 「そんな言いぐさは死刑反対論に対する言論封鎖、恫喝ではないか」
反対論者にこう言われそうです。ほんま、イヤミ、脅かしですね。
実際、自分がもし事件当事者になってしまったら・・と想像すると、死刑反対を唱える意欲や情熱が失せてしまうかもしれない。結局、そんな希な事態は自分には起こりえないとした上で発言、行動するしかありません。

それは致し方ないと認めますが、それでもなお反対論者に「偽善家」のイメージをもってしまうのは、こちらがよほどひねくれているからか。大阪弁で言えば「ええかっこしい」に思えるのです。
 
★団藤重光著「死刑廃止論」を読んでみたけれど・・・
 まじめに意見を述べる死刑反対論者は大方読んでるのでは、と思えるこの本を図書館で借りて読みました。著者は東大教授、最高裁判事を勤めた刑法学の権威で文化勲章受章者という、えらい先生です。リンク紹介した「フォーラム90」運動にも関わっておられました。

 死刑存廃に関する文では5割が「誤判(えん罪)」問題、2割が死刑がいかに残酷、非人間的な刑罰であるかの所感、そして国連の死刑廃止条約への加盟(日本政府による批准)促進と残りわずかが被害者遺族の無念さ、怒りへの同情について書かれています。廃止論だから、死刑反対論者にはモロに共感できる内容です。また、著者が判事だったから「誤判」の恐ろしさを自覚するのは当然で最重要テーマになるのは仕方ないとしても、誤判の可能性あるゆえに死刑は廃止するべきという主張が突出しているのはいただけない。

 でも、全体的には平易な文章で読みやすいから、賛否はともかく参考にはなります。(1992年 改訂版 有斐閣発行)

★国際条約を批准しないから「遅れた国」なのか
 「フォーラム90」をはじめ、死刑廃止を唱える組織は国連の「国際死刑廃止条約」批准を大きな活動目標に掲げています。世界の趨勢は死刑制度廃止に傾き、大国で知らん顔しているのは日本と中国だけだそうです。途上国?の中国はさておき、先進国の日本が加盟しないのはみっともないというわけです。
 団藤氏の「死刑廃止論」にも「日本が政治的にも国際的にも認められるようになるには、経済大国というだけでなく、文化的にも大国にならなければなりません。人権問題全般について、欧米諸国に見劣りするようでは困ったことです」とあります。(33頁)

よく名前を聞く「アムネスティ・インターナショナル・ジャパン」もこのことを強く訴えています。
 「あの〜、なんでっか、日本だけ死刑制度があるのはかっこわるい、
世間体が悪いから死刑を廃止したいのでっか」とイヤミを言いたくなりますが、世論で死刑廃止賛成が50%くらいにならないと難しいと思いますよ。今の死刑廃止論で容認派を説得するには限界があります。

団藤氏はこんなことも書いています。
「フランスでは世論の過半が死刑容認にもかかわらず、政府が率先して死刑廃止条約に加盟した。政治家は世論に追従するだけではいけない。自ら高い理念を掲げて国民をリードしなければいけない」
死刑を廃止したからといって、それが国民の意思を反映しているとは限らない、ということです。

 文化的背景で言えば、欧米では子供時分から信仰生活のなかで罪と罰の概念をある程度インプットされる面があるのに比べ、日本では死刑問題で宗教的概念はほとんど影響力をもたないという事情もあります。

★事件現場での犯人射殺は生存権、人権侵害にならない? 
 一方、死刑廃止国でも起きる凶悪犯の犯行現場では、警官が犯人を射殺して一件落着みたいな場面がよくある。犠牲者が増えるのを防ぐために、やむを得ずの措置だとしても、この点は日本の方がはるかに慎重な対応をしているように思えます。ときに臆病と思うくらいです。拳銃で威嚇する犯人にも、とことん説得を試みるのが普通です。言い換えれば、凶悪犯の生命と人権を尊重した対応です。

 凶悪犯を現場で射殺・・・これって、裁判抜きの死刑に準ずるような気がします。「国家による殺人」を非難する人は、この非常措置をどう説明するのでしょう。正式の裁判を経た上での死刑は「国家による殺人」であるが、犯行現場での射殺は単に正当防衛であって殺人に非ずという論理が成り立つのでしょうか。あるいは、死刑制度と事件現場の対応は次元の異なる問題で論じる必要なし、なのか。

うがった見方をすれば、官権側には「逮捕しても死刑にならないから、ここでケリをつけてやる」という発想も起きかねない。
 
 そういう文化や国民性の違いを考慮せず、外国は死刑廃止しているからと訴えても、共感を得るのは難しい。 まあ、こんな意見は、死刑反対派のセンセイ方から見ると、どうしょうもない俗論、感情論としか思えないでしょうね。

■団藤重光氏のプロフィール
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%A3%E8%97%A4%E9%87%8D%E5%85%89

■アムネスティ・インターナショナル・ジャパンのホームページから
「死刑存続・廃止国リスト」ページ
http://homepage2.nifty.com/shihai/shiryou/death_penalty/abolitions&retentions.html

 




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