読書と音楽の愉しみ



●宮本輝著「泥の河」「蛍川」を読む

 読みたいと思いつつ、さぼっていたこの本を古本屋のよりどり百円箱で見つけた。角川文庫で平成9年に70刷だから地味なベストセラーであります。芥川賞受賞の「蛍川」と太宰治賞受賞の「泥の河」両作品が一冊で読めるのだから「お買い得」本でもある。


両作品とも主人公は少年。多感な彼らが味わう肉親や友人の死を通じて味わう切なさ、しみじみ感がウリでせう。著者30歳時の作品だけど、若書きといえるような未熟さはなく、練度の高い文章で読者を惹きつける。近年の芥川賞作品にみる、いかにも文学してますふうのキザな表現がないだけでも心地よい。 どちらの作品がより感銘深いかと問われたら「泥の河」です。舞台が中之島の西端(安治川の起点)という地理的親密感があるためですが、いまや流行らない古典的しみじみ感と読後の余韻においても勝っている。


著者は現在芥川賞の審査委員を担っている。先日紹介した今期の受賞作「影裏」の審査では、これを推さなかった。賞を取るための小細工に嫌悪感をもっている。文章が上手い云々以前の問題でアウトにしたようですが、本書の二作品を読めば、レベルの違いは納得できる。しかし、それは駄目男の「昔はヨカッタ」ふう懐古趣味のせいかもしれない。それは認めるとしても、毎日数時間もスマホをいじってる人たちが決して味わえない、文学作品を読むヨロコビを100円の投資で享受できたのであります。スマホを捨てよ 本を読もう。(昭和55年 角川書店発行)


ほたる河
 



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