読書と音楽の愉しみ



●渡辺和子著「置かれた場所で咲きなさい」を読む

 2012年発売後、累計200万部以上売れたという大ヒット本であります。本書を発行する前、著者はすでに10冊ほど同工異曲の本を出版していたが、ヒットはしなかった。本書が突然ヒットしたのは、内容より題名によるところが大きいと思っています。それまではキリスト信仰をテーマに「心の~~」とか「愛が~~」という題名で、まあ、ありきたり、陳腐なものでした。発行所はPHP研究所に限られていました。それが、題名を「置かれた・・」に変え、発行所も、やり手社長、見城徹氏が率いる幻冬舎に変わると、パンパカパ~ン、大ヒットしたのでした。


似たような内容でも、題名を工夫するだけでこんなに売れるという見本です。著者は2016年に亡くなりましたが、苦節50年、名誉も報酬も最高のものを得て旅立たれました。苦労は十分報われたと思います。 さてと、本書を読んでみると、この本がなんで大ヒットしたのか、よく分からないというのが正直な感想です。カトリックの教えを強くうたわず、上から目線で説かず、といったソフトな語り口が読者に受け入れやすかったではと思いますが、基本は、題名のように、多くを求めず、感謝と寛容のこころをもって生きなさい、ふうなことを説いています。


若者が読めば人生の指針になるような内容であっても、60歳過ぎて、世間の波にもまれてきたじいさん、ばあさんには何ほどの有り難みも感じない本でせう。ありがたい説話も「それがどないしてん」な感じ。但し、著者の父親が二・二六事件で反乱者に襲われ、9歳だった著者の目の前で絶命した事件は生涯トラウマになり、それでも晩年に至って加害者を許す決心に至るのは、常人にはできないことであり、信仰という心の支えがあればこその大決断です。あなたに出来るか、と問われたら「でけまへん」と答えます。


本書は中央図書館の7月読書会の指定本。無難な感想を述べた人が半分、あとは結構きつい批判の発言で、200万部セラーのヒット作品とは思えないイジられ方でした。年寄りは意地悪でおます。(2012年 幻冬舎発行)


置かれた場所で・・ 




 

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