読書と音楽の愉しみ



●中島誠之助著「骨董掘り出し人生」を読む

 「開運なんでも鑑定団」の常連鑑定士としておなじみのオジサン。すごい博識ぶりに感心していますが、どんな人生を送ってきたのだろうか、興味がありました。昭和13年生まれだから駄目男より一歳上です。裕福な家庭に育ったが身内の人事が複雑で諸々の事情から養子として育った。義父が骨董商なので修業は必然だったけど、跡継ぎにはなりたくないと逃げ回る。最後は遠洋のマグロ漁船の乗組員になって日本脱出までやるが、結局、骨董人生を送ることになった。


有り体にいえば、骨董商は「本物か、偽物か」の世界。骨董趣味人が経験を積んだからなれるという甘いビジネスではない。

・先天的に恵まれた感性、美意識の持ち主
・子供じぶんからの豊富な学習
・人間の真贋を見分ける才能、人脈づくりの才能も必要
・時代感覚にも敏感であること

等々の才覚がある人だけが成功する。なんでも鑑定団には、自称「この道30年」みたいな趣味人(鑑定依頼人)が登場するが、ほとんどはただの素人である。骨董修業の基本は風呂敷包みのワザ。いろんな形の商品をいかにきっちり、丈夫に包めるか。これだけで一年くらいかかるという。(現代は宅急便の発達で段ボール輸送になった)著者は風呂敷包みのワザでは日本で五人の内に入る名人だと自負している。


いろいろ苦労を重ねた末、独立して店をもつことができた。誠実な商いが認められて上客がつくようになった。なかでも贔屓にしてくれたのが高峰秀子。彼女は女優を引退後、骨董の蒐集に凝り、中島氏は良い相談相手になった。こういう経験が骨董商のネームバリューを高めることになる。1970年代、雑誌「ミセス」や「家庭画報」で古伊万里を紹介する記事が多くなった。そのころ著者は自分のセンスで集めた古伊万里の専門店「からくさ」をオープンした。すると雑誌などの取材が増え、古伊万里ブームが起きる。どかどか売れるので仕入が追いつかず、田舎町を車で駆け回って集める。国内で品薄になるとヨーロッパまで出かけて古伊万里探しをした。(明治時代に大量に輸出されたので、欧州にはたくさんあった)


かくして古伊万里ブームのおかげで貧乏暮らしと決別、リッチマンになれた。しかし、それも見切りをつけて商売はやめ、著作や講演会で稼ぐことがメインになる。今や悠々自適の身、ふだんは八ヶ岳山麓に建てた山荘で読書三昧の優雅な日々を送る。嗚呼、うらやましい。(2007年 朝日新聞社発行)

 
古伊万里大皿
中島 


中島




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