読書と音楽の愉しみ



●竹本住大夫著「人間 やっぱり情でんなあ」を読む

 惜しまれつつ引退した浄瑠璃の大御所、住大夫の回顧録。話し言葉、それも大阪弁での語りなので、堅苦しさはなく、とても読みやすい。かつ、中身も濃い。50年、100年先になったとき、昭和、平成時代の文楽世界の記録としてとても良い資料になること間違いなしであります。


住大夫自身、師匠とマンツーマン、スパルタ教育で鍛えられた。教える立場になっても弟子にはスパルタ式で芸を仕込む。これには賛否両論あるだろうけど、本書を読む限り、ものわかりのよい、甘い態度では優秀な大夫は育たないと思わせる。そもそも「ちゃんとした大阪弁」を話せる若者がいないから基本のキから教えなければならない。師匠がイラついてカッカするのがわかります。ちゃんとした大阪弁といっても、江戸時代の大阪弁ですからね。楽に習得できるはずがない。


全編、苦労話がてんこ盛りという感じですが、戦中、戦後の、三度のメシにも事欠くありさまは、戦前生まれの読者の身にシミます。ちなみに、文楽の技芸員は全員召集され、戦地へ送られた。しかし、現地で戦死や病死した人は一人もいなかったという。これはとてもラッキーですが、終戦間際の召集なので戦闘シーンに遭遇せずに済んだとも言えます。


本書は住吉図書館読書会の選定本だったので、十数人の参加者が感想を述べあいました。一番共通した話題は本書でもチラリと出て来る、橋下市長時代の文楽協会への補助金カット問題。この件で橋本市長が嫌いになったという人が大勢いた。(駄目男もその一人)芸術文化に対する理解の無さ、が嫌われた由縁ですが、うがった見方をすれば、これが大阪都構想賛否投票でマイナス要因になったかもしれない。賛否きわどい差だったので影響した可能性はあります。橋下サンの美的センスの無さは育ちの悪さによる。氏より育ちと言うけれど、彼の生い立ちに美意識が育つような環境は全く無かった。松井知事も似たようなものですけど・・。(2014年 文藝春秋発行)


人間やっぱり 





スポンサーサイト