読書と音楽の愉しみ



●葉室麟ほか著「決戦!大坂城」を読む

 講談社では新発想の歴史小説本として「決戦」というテーマをつくり、「関ヶ原」「桶狭間」「川中島」など数種類の本を発行しています。特色は、これらのテーマで数名の新進、ベテランの作家が独自の構想で短編を書き下ろし、競作?していることです。読み手は楽しいが、書き手は作品の優劣を即断されてしまうのでなかなか厳しい。


今回の「決戦!大坂城」は中央図書館の読書会の指定本だったので、参加体験も兼ねて読みました。決戦とは、大坂冬の陣・大坂夏の陣を指します。以下、作者とタイトル、主人公の名前を記すと・・・

・葉室麟『鳳凰記』ー 淀殿
・木下昌輝『日の本一の兵』ー 真田信繁
・富樫倫太郎『十万両を食う』ー 近江屋伊三郎
・乾緑郎『五霊戦鬼』ー 水野勝成
・天野純希『忠直の檻』ー 松平忠直
・冲方丁『黄金児』ー 豊臣秀頼
・伊東潤『男が立たぬ』ー 福島正守


意外に思ったのは、七名の作家の文体に個性が感じられなかったこと。みなさん、申し合わせたように文体が揃っています。歴史もんはこういうふうに書く・・と、訓練されたみたいにまとまっています。もし、この中に司馬遼太郎の作品を混ぜれば、文体だけで司馬作品と判定出来そうな気がします。文章にクセの無いぶん、読みやすいというメリットはありますが。


読書会では、自分のお気に入り作品として「黄金児」「男が立たぬ」の二作品を推しておきました。いずれも豊臣秀頼の最後が描かれており、今まで何となく「頼りない、甘ったれ」のイメージがあった秀頼を、凛々しく教養も高い貴人として描いています。近年の研究でいろんな資料から従来と異なる秀頼像が確かめられているのかも知れません。他の皆さんの評価では米商人を描いた「十万両を食う」が好評でした。戦争のどさくさで古い米を高く売りつけて大もうけしようとするがめつい男の波乱を描いた作品です。(2015年 講談社発行





本 6がつ







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