読書と音楽の愉しみ



●井上道義「ブルックナー9番」を聴く

 「大ブルックナー展」なんちゃって、美術展みたいな冠をつけて、大フィルとのシリーズ演奏会。今回の9番で最終回を迎えた。企画当初にガンが見つかって、あわや・・と心配された井上サンですが、どうやら克服したようでファンも一安心です。はじめて3階席で聴いたけど、音響的な不利はなく、視界も良好でした。(距離感は相当ありますが)


9番はブルックナー最後の作品。そして第3楽章でオシマイという未完成作品です。但し、演奏時間は70分を要するので短いという印象はまったくない。そして、今回しみじみ感じたことは「4楽章はナシでもええ」でした。音楽としての完成度からいえばこれで十分、なんの不満もない。おそらく聴衆のほとんどは同じ思いをしたのではないでせうか。


しかし、伝記を読むと、ご本人は最後まで書きたかったらしい。余命いくばくもないと悟っていても書きたかった。もうアカンとなってからは、自作の「テ・デウム」を4楽章として演奏してほしいと周囲に頼んだらしい。でも、そんなことしたら9番全部がオシャカになること明白だから、みんな無視した。無視して正解です。


その第3楽章はアダージョで終わる。ラストの2分間くらいは現世から彼岸へ三途の川を渡るがごとき浄められた音の世界、こんなふうに息を引き取ることができたらどんなに幸せだろう・・あの世が近いオジンでなくてもイメージした人多いと思う。管楽器が最高のデリカシーを以て、最後はホルンがささやくように鳴る。もうこの先は要らない。


と、大フィルも渾身の名演奏でしたが、拍手でフライングした駄目客が数人いた。このがきゃ~。折角の崇高な余韻をぶち壊したのであります。芸センの聴衆のレベルアップに、あと10年くらいかかりそう。(5月21日 兵庫県立芸術文化センター大ホール)



ブルックナー





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