読書と音楽の愉しみ



●井上理津子著「大阪 下町酒場列伝」を読む

 ひと昔前「大阪人」というローカル雑誌があった。そこに連載されていた酒場紹介記事をまとめて文庫本にしたもの。井上理津子の著作は「最後の色街 飛田」を読んだことがあり、とても読みやすく、下町の人情物語を描くのが上手いので気に入っている。


大阪市内全部で29軒の居酒屋が紹介されているが、取材は2001~2003年。ということは、現在まで十数年たっていて、店主が亡くなっていたり、廃業した店もある。自分が行ったのは29軒中、わずか4軒だけど、今も生存しているかどうか確かめていない。


せめてもう一軒は訪ねて見ようと「背割堤」へ行った帰途に大正区の「クラスノ」へ。JR環状線大正橋駅北側の路地にある、間口2間の小さい店。入り口寄りのカウンター席に座ると目上に賞状が2枚。古ぼけた方は平成元年、海部首相から授けられたもので、厳しいシベリア抑留の労苦をねぎらったもの。もう一枚は百歳を祝う安倍首相からの賞状。下町の酒場に首相から贈られた賞状が2枚もあるのは珍しい。


店名の「クラスノ」はソ連(当時)の中央部にある街の名前、クラスノヤルスクのことで、ここで長く辛い抑留生活を送った。忘れてしまいたい恨みの街なのに、逆に再出発人生の原点と考えたらしい。店主、松原さんは今年百一才を迎え、さすがに衰えて老人施設で暮らしておられる。ちなみに、この本の取材で著者が訪ねたときは84才で、元気ハツラツ爺さんだった。店は、息子さん、お孫さんに引き継がれて、メニューも先代のものを引き継いでいる感じだけど、不詳。


評判の良い「だし巻き」と「きずし」「いか天ぷら」と焼酎を注文したが、きずしの酢が甘すぎるのが残念。敷居の低さは文句なしなので、一人で出かけてもすぐなじめます。(2004年 筑摩書房発行)


海部首相からの賞状
クラスノ 


安倍首相からの賞状
クラスノ

クラスノ 


クラスノ 




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