読書と音楽の愉しみ



●山下澄人著「しんせかい」を読む

 第156回芥川賞受賞作品。例によって、月刊「文芸春秋」を買って作品部分をナイフで切り取って読む。単行本で買うと1728円もする。 毎回、今度こそは読み応えある作品を、と期待するのですが、残念ながら今回もアウトでした。話は、倉本聰氏が主宰する演劇塾に参加した青年(著者)の経験をもとにフィクションに仕立てたものですが、毎度のことながら、身辺10m内のことしか書けない。そもそも「しんせかい」というタイトルからして、脱力感しか感じられない。


もしや、自分に鑑賞眼がないだけかもしれませんが。これが傑作でないことは審査した各氏の論評でもわかります。何人かが「なんでこの作品が選ばれたのか」と他人事のように無責任な発言をしている。だったら、今回は受賞作品ナシ、という結論でもよいではないか。(受賞作ナシの回もかなりある)あるいは、選考を現在の年二回から一回に減らしてはどうでせうか。少なくとも現在よりはレベルが上がると思います。


芥川賞を受賞して、その後も作家として活躍している人は意外に少ない。みなさん、なんでメシを食ってるのかと心配するくらいです。過去10年間の受賞者を調べてみると、青山七恵・諏訪哲史・楊逸・磯崎憲一郎・赤染晶子・朝吹真理子・鹿島田真希・黒田夏子・田中慎弥・藤野可織
・小山田浩子・小野正嗣・滝口悠生・・・の各氏は、はやばやと有名作家から無名作家になってしまった。しょせんは「一発屋」でしかなかった。「火花」で億単位の稼ぎをした又吉直樹氏だって、名前は知られてるけど、評価された作品はこれ一作きり。なので、これの焼き直し(文庫本化とか)とテレビへの露出でなんとか世間に顔つなぎしている。


芥川賞に比べたら、直木賞作家のほうがずっと存在感が大きいような気がします。知名度、収入、において芥川賞作家より上ではないか。分かりやすい話ゆえに、TVドラマ化、映画化がしやすいのも有利です。むろん、直木賞作家にもピンとキリの落差は大きいでせうが。直木賞作家、朝井まかてさんは講演会で「芥川賞や直木賞を受賞した作家でも、年収200万とかの人が普通にいる」と業界裏話をしていましたが、誇張ではないと思います。・・と、芥川賞作品に文句言いながら、半年後、新作品が発表されると、つい「文藝春秋」を買ってしまう駄目男であります。 

しんせかい 






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