読書と音楽の愉しみ



●お手軽政治本2冊

■田崎史郎著「安倍政権の正体」を読む

 題名を見ると反安倍派の書いた本みたいに思えるけど、中身は逆、むしろ安倍政治を評価していると思える本であります。35年に及ぶ政治取材実績から新聞やテレビでは報道されない裏情報もある。記者は人と会うのが仕事とはいえ、それを克明に記録するのは大変なはず、本書でも、何年何月何日、自民党の何某はこんなことを語った、という場面がたくさんあり、実際、どんな方法で記録、整理しているのか知りたくなってしまう。


大事な政策は、いつ、誰が決めるのだろうか。たいていの人は国会での議論や毎日開かれる閣議の場面を思い浮かべるはず。それが実際は・・ごく少数のメンバー「正副長官会議」で発案、判断される。総理と官房長官、副長官、秘書官、このメンバーが随時に開く会議で決まる。要するに、大臣よりエライ人たち・・と言ったらなんですが、そうらしい。
 現在の安倍総理~菅官房長官体制はうまくいってるので、当分は大臣も官僚もこれにイチャモンをつけるなんて不可能に近い。逆に言えば、その分、彼らの責任は非常に重いといえます。日本の未来がこの数人の智恵と決断にかかってるわけです。


本書がこのことを繰り返し書いてるのは、総理~官邸におけるコミュニケーションがうまくいかず、ゴタゴタした前例がいっぱいあるから。総理のアタマがいくら良くても、人を上手に使う才能がなければ政治はできない。その点で、あの田中角栄は一流だった。
 逆にサイテーだったのは2009年からの民主党政権で、鳩山由紀夫と菅直人は政治家として余りにもレベルが低かった。政治思想云々以前に人間としての資質が問われた。今や、民進党にとっても二人はお荷物でしかない。


本書の後半では菅官房長官のことに多くの頁を費やしている。普通はエリートコースを歩んだ人が選ばれるポジションだけど、菅サンは田舎出の苦労人、そのぶん、人を見る目が肥え、言動も慎重である。他の歴代官房長官に比べ失言が少ない。(余計なことは言わない)どこまで事実か分からないが、秋田の田舎町の高校を出て、東京では段ボール工場の工員、ガードマン、カレー店の店員、築地市場の台車運びなど、食うためになんでもやったという。現在の仕事ぶりは、庶民からみれば、真面目すぎて面白くないオジサンではありますが。安部総理のトップ下で十分実績を積んだ。信頼も篤い。で、この先どうするのか。ポスト安倍は石破さんといわれてるけど・・。(2014年 講談社発行)


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■小池百合子著「女子の本懐」を読む

 駄目男が小池氏に好感を持てないのは、昔の「政界渡り鳥」のイメージが強いからであります。しかし、先の知事選挙で、もし、マスダさんやトリゴエさんが当選していたら、を想像すると、小池サンで良かったと思わざるをえない。都民の多くも、ベターな選択だったと安堵しているのではありませんか。ま、前任のマスゾエさんがあまりにアホすぎたために小池サンが良く見えるのかも知れませんが。


本書は、10年前、たった55日間だけど防衛大臣をつとめた時の回顧録。本人の日記をベースに書いているけど、この仕事柄、本に書けないことが多いから、全体に当たり障りのないことばかりであります。 はじめの文に、ニヤリとする場面が書いてある。大臣になると宮中で認証式が行われる。天皇陛下直々に賜るのですが、書状を受け取ると、陛下に失礼にならないよう、書状を頭上に捧げ、前を向いたまま後に3歩か4歩後へ下がる。彼女はハイヒールを履き、床に届くロングドレスを着ていたので、一瞬、下がるときにドレスを踏んでドテッとコケる場面がひらめき、大緊張したと。横には報道陣がカメラを並べているから、もしも・・。まあ、100年間は歴史ニュースで報じられるでせうね。ヨカッタ。


国会のセンセイ方はみんな大臣になりたがる。しかし、なってみれば実にしんどい。たまたま防衛大臣だけが忙しいのかもしれないけど、早朝から深夜まで東奔西走は日常です。特に大きな災害があり、そのときに外国高官との会議が重なったりすると、一分きざみのスケジュールで動かなければならない。大きな災害が重なると、早朝から東北へ行って、午後には九州へ飛び、夕方に東京で外国高官との重要会議、なんてことが普通に計画される。疲れた顔は見せられず、ちゃんとドレスアップしなければならない。男に比べ、このへんは女性は辛いでせう。ヘリは軍事用だから、乗り心地快適であるはずがないし。


この本は日記を元に書かれたが、むろん、国家機密の事案もあるから本に書けない。せいぜい誰と会談したかくらいまでで、中身はナシ。当時、大きな騒ぎになった守屋次官と人事軋轢なんかもさらりとかわしてる。そういう不満はあるけど、今の稲田朋美大臣と比べると、小池サンの「強者」ぶりはなかなかのものであること分かります。将来、東京都知事をやめたら、たぶん回顧録をかくでせう。それを楽しみに・・いや、自分はあの世へ行ったあとかもしれません。(2007年 文藝春秋社)


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