ウオーキング・観光



●楽しい「イケフェス」見学記 ~その3~


◆浪花組本社ビル
 「生けフェス」で公開されたのは、有名大企業のビルだけではなく、個人住宅も含まれたワイドなジャンルでオープンになりました。この浪花組も知名度は低いながら、左官業ではトップクラスの実績がある老舗業者です。そんな左官業者のビルがなんで公開に応じたのか。実は、このビルを設計したのが、文化勲章受賞の一流の建築家、村野藤吾(故人)だからです。では、浪花組と村野藤吾との関係はいかがなりや・・本題から外れるのでパスであります。


現地を訪ねてビックリなのは、ビルがミナミの飲み屋街のど真ん中にあることです。えらいとこに建てたなあ。訪問のみなさん、一様に驚きます。なんでこんなとこに?・・いや、これも本題ではないからパスです。
 外観は写真の通り。おそらく、浪花組の社長さんは村野センセに「ゼニはなんぼでも出します」とか言ったのか、かなり手間のかかるつくりになっており、インテリアも大理石を使うなど、普通のオフイスには贅沢すぎる仕様になっています。でも、正直言って、この外観は「考え過ぎて失敗」ではないかと駄目男は思うのでありました。村野センセ、スビバセンね!


村野藤吾の業績などはこちら・・・
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%91%E9%87%8E%E8%97%A4%E5%90%BE#.E4.BD.9C.E5.93.81



ネオン街のど真ん中にある本社ビル(中央区東心斎橋)
浪花組 



壁面のディティール 老朽化が激しい
浪花 おわり 



いまどき珍しい、ブラウン管式のコンピュータを使っている
浪花 



事務机や応接セットまで、家具も村野氏がデザインした。写真は受付用のデスクと椅子。角張ったデザインが嫌いで、丸みのあるかたちで統一されている。
浪花



浪花組は、実は、心斎橋の喫茶店「プランタン」のオーナーでもあった。廃業後、客用の椅子が本社の会議などで使われている。
浪花



バブル景気はなやかだった時代、当社は金融業にも手を出し、地下に顧客用の金庫室をつくった。
浪花


金庫室には、万一閉じ込められたときのために脱出口が設けてある。但し、知っているのは社員のみ。
浪花 


業績を高めた三代目社長、N氏は、四六時中、接客時でも濃いめのサングラスをかけていた。ゆえに「Nはん、目え無いんちゃうか」と陰口する人もいたとか。
浪花 


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◆モリサワ本社ビル
 地下鉄大国町駅近くにあります。すぐ東側が「木津卸売市場」という、少し殺風景な環境。当社は、知名度でいえば浪花組よりさらに低いかもしれません。パソコンなどで使われる文字の書体(フォント)を開発、販売する会社です。きわめて特殊な分野の仕事で、一般の人には理解しにくいためか、ショールームでは「文字の歴史」の解説からやっています。ふだん、なにげに使ってる漢字や英文字も時代に即して新しいデザインが開発されており、ワープロ時代に比べたら、ずいぶん種類が増え、形は洗練されているはずです。ただ、一般のユーザーは気づきにくい。


では、当社の最新デザインの書体はなにか、といえば「新ゴ」だそうです。ゴシック体の最新デザインですが、どの辺が新しい?となると、いわく言いがたい。それくらいビミョーな変化です。それより、駄目男が抱くキホン的な疑問をガイドのおねえさんにぶつけてみました。「書体の開発が仕事であることは分かる。ではどうやってゼニ儲けするのでせうか?」答えは「新書体のソフトをパッケージにして売り込む」でした。スマホの画面で最も読みやすい書体を開発すると、それをアップルとか、MSとか、各メディアへ売り込む、と。


話は単純ですが、まあ、難儀な交渉でありませう。それに「新ゴ」という新製品を開発したら、漢字、かな、数字だけでなく、この書体に見合う(違和感を起こさない)英文字やハングルも新デザインにする必要がある。そのあたりがなかなか難儀で、つまり、開発費用がかさむ。さらに、漢字の場合は正字と略字、両方つくるだけでもすごい手間がかかります。アナログ時代は一字ずつ手書きでつくったというから、気の遠くなりそうな根気のいる仕事でした。駄目男なら勤務三日で辞表出しそう。


文字づくりがいかに面倒くさい仕事であるか、「憂鬱」の漢字をサンプルにすると・・・左から「小」「中」「大」の見本を示しますが、画数はそれぞれ異なっています。小は大の三分の一くらいしか画数がない。それでも「ゆううつ」と読ませなければならない。ここんところが書体デザイナーの腕、センスの見せ所でせう。ややこしい漢字が千字あるとすれば、最低三千字の書体をつくらなければならない。書体が十種類あれば三万字。コンピュータが自動的に略字のデザインをしてくれないのであれば、一字ずつ手作りです。嗚呼、駄目男には、想像するだに憂鬱な仕事です。

 憂鬱     憂鬱    憂鬱 小中は略字、大のみが正しい漢字 


モリサワ本社ビル
モリ おわり 


文字の歴史、書体の進化などを展示しているショールーム。
モリ 


当社が飛躍するきっかけになった写植機の展示
モリサワ



古代中国の甲骨文字
モリ 


安政の江戸大地震を伝える瓦版
モリ

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昨年の「生けフェス」では3万人ものビジターがビル見学を楽しんだそうです。新旧の建物に好奇の目を向ける、愛着を持つ・・鉄道ファンに似たところがあるかもしれません。鉄ちゃんならぬ、建ちゃんですか。主催者の弁では、大阪は市内の中心部に鑑賞価値の高い建物がギュッと詰まってる希有の都市であるそう。興味湧けば、来年はぜひ参加してみて下さい。(公式ガイドブック300円 見学はほとんどが無料)




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