読書と音楽の愉しみ



●小林嬌一著「街は面白さの宝島」を読む

時代差を知るのが楽しい
 数ヶ月前にここで紹介した「路上観察学」のポピュラー版といえる街歩きガイド。取材は東京に限られているけど、興味深いのは本書が1989年の発行であること。今から27年昔のガイドで、現在との時代差を読むのが楽しい。89年といえば、バブル景気のピーク直後でした。


観察対象は60余あり、それぞれにウンチクを傾けていますが、そうだったのか、と初めて知る知識もあります。例えば、エスカレーター。この名称はオーチスというメーカーの商標をそのまま使っている・・知ってました? エレベーターとエスカレード(梯子で登る)の合成語だそうです。日本語では「自動階段」という。なんか笑ってしまいそう。
 日本では運転速度が毎分30m以下、と決められているが、例外に40mを認めているところもある(ビジネス街の駅など)。英国では44m、ロシアでは60mが認められている。60mって、年寄りは恐怖感を覚える早さです。ロシア人はイラチなんでせうか。


もう一つ「キヨスク」の豆知識。これの語源はトルコ語でキオスク「あずまや」の意味。あずまやを漢字で書くと「四阿」。この漢字はほとんどの人が読めなくなり、観光ガイド本には「東屋」なんて当て字を使ってることもある。トルコ語も日本語も分からないまま平気で使ってます。
キオスクをキヨスクにしたのは単に言いやすいから、だそうです。
 著者はこのキヨスクを「国鉄が民営化したことを象徴するサービス施設」と持ち上げているのですが、現在は絶滅状態。代わってコンビニ業界が内容、サービスを刷新して稼いでいます。


はじめに「時代差を読むのが楽しい」と書きましたが、例えば、こんな物件です。「路面電車」「ネオンサイン」「伝言板」「電話ボックス」「靴みがき」「ユースホステル」など。1980年代は普通に街歩きの観察対象になっていたのに、いまや絶滅危惧種になっている。伝言板なんて懐かしいですねえ。駅構内の黒板に誰でも書くことができて「三〇分待った、先に行く」とか、短文にいろんな感情を込めて書いた。
 ユースホステルは当時すでに廃れていて、東京都区部に2カ所、大阪市内に1カ所しかないと嘆いている。最盛期の昭和47年には63万人もの会員がいたというから嘆く気持ちは分かります。貧乏旅では必須の「青春18きっぷ」も遠からず消えるかもしれない。


「君の名は。」も賞味期限は短い?
 話は変わりますが、時代差や賞味期限という観点で考えると、先日観たアニメ「君の名は。」も鑑賞してる最中に「大丈夫?」と懸念したことがある。画面に普通に出て来る小道具「スマホ」のこと。描かれるのは現在の商品で何の違和感もないけど、もし、10年、20年後にこの作品を観たらどんな印象になるだろう。思いっきりファンタジックな物語に、現在発売されているリアルなスマホ。これって、ヤバイのでは?とスマホを持たないオジンが余計な心配をしたのでした。ジブリ作品やディズニーの「雪アナ」には、この賞味期限の心配が少ないと思います。(1989年11月 日本経済新聞社発行)


matigaido 




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