大阪日暮綴

 

●無念のモニュメント

 長居公園の南西隅の木立に風船をあしらったモニュメントがある。派手なデザインだけど、これはこの場所で落雷に遭い亡くなった20代の女性二人を悼むモニュメント。事故は2012年の8月に起きた。長居スタジアムで催されたEXILEの公演に来て難にあった。


亡くなった二人の一方の両親は、主催者の安全誘導が適切でなかったから事故が起きたと裁判を起こした。その判決が今年5月にあり、訴えは認められなかった。現場からスタジアムまで直線で300mくらいあり、これだけ離れた場所でも主催者は会場の安全管理の責任を負うか、が争点になったみたいだけど、判決は「責任は問えない」だった。


ご両親の無念さは十分わかります。自分が親だったら「運が悪かった」で済ませたくない気持ちになるだろう。交通事故なら「ひき逃げ」されたのと同じくらいの悔しさでせう。交通事故なら犯人が分かれば最低、保険などの反対給付があるけど、落雷ではそれもない。怒りは主催者に向けるしかない。


もし、裁判で「主催者に責任がある」という判決が下りたらどうだろう。同様の野外コンサートは怖くて企画できなくなるのではないか。コンサートに限らず、スポーツイベントや海水浴や釣り大会、ハイキングなどの行事でものすごく主催者のリスクが高まる。そのために高額の保険をかけるとすれば、主催者や参加者の保険料がベラボーに高くなる懸念がある。雷には「空雷」という全く予想不可能な落雷もあるから、対策云々自体が無意味に近い。


本当に残念な事故だけど、人は不運というしかない死に方をすることもある。会社や他人の責任を問うのが困難な事故がある。判決の社会的影響の大きさを考えれば、今回の無慈悲と思える判断は是として良いのではと思う。いっぽう、もし、亡くなった方が80歳の老人だったら、遺族は裁判を起こしただろうかという意地悪な想像もしてしまう。(80歳でEXILEの公演に出かけるかどうかは別として)


モニュメントには、ご両親の「ここに娘の銅像を建てたい」旨のメッセージがある。気持ちは分かるけど、市立公園の敷地に私的な銅像の建立が許されることはあり得ない。というか、この現在のモニュメント自体、敷地の不法占拠だとして、すぐ横に市役所の「撤去しなさい」の看板が置いてある。いつ実行されるか分からない強制撤去に対抗するためか、毎日、見張り番のおじいさんが詰めている。


亡くなった娘さん、悲嘆に暮れるご両親には100%同情しつつ、なんか違和感がぬぐえないモニュメント。慰霊のためというより、他者(興行主催社)を弾劾するためのメッセージが多くを占めて、手を合わす気になれない。


 モニュメント




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