読書と音楽の愉しみ



●村田紗耶香著「コンビニ人間」を読む

 第155回芥川賞受賞作品。著者は現役のコンビニ店員で、受賞後もアルバイト店員として働く。・・のであれば、コンビニや業界の悪口を書くはずはなく、真逆に、コンビニにぞっこん惚れ込み、コンビニ店の「部品」として働くことに無上の生きがいを感じている。食うためのアルバイトなんて失礼な! コンビニ=命、であります。


作品はむろんフィクションで、体験や業界の内側をセキララに描いたものではないけれど、体験者でなければ書けない仕事のディティールが描かれて興味深い。例えば「マニュアル化徹底」の話。コンビニは10人くらいのスタッフで店を回していて作業や顧客サービスについてはマニュアル化が徹底されており、特に、客の印象を左右する挨拶の表現は、声の出し方、イントネーションまでとことん練習させられる。なので、各社が「これがベスト」と思う表現を取り入れると、結局、セブンもローソンもファミマも同じものになってしまう。看板を見ずに店を訪ねたら、どの店か分からない。


そんな無個性、均一化のマニュアルに普通は抵抗を感じるはずだけど、著者はむしろ快感を覚えるくらいの同化ぶりであります。それじゃダメじゃん、文学作品なんか書けるわけがないと思うのがシロウトの浅はかさで、村田サンは見事に芥川賞を獲得した。快挙であります。
 だからといって、コンビニ店員でも芥川賞作家になれる、と早合点してはいけません。著者はすでに野間文芸新人賞や三島由紀夫賞を獲得しているプロ作家であり、十数年の作家実績をもった上での今回の受賞です。


話は、前半はコンビニライフにどっぷりはまった様を描き、後半、店で新採用したけどすぐにクビになるスーパー駄目男「白羽」君との奇妙な同居生活がはじまるところから「芥川賞」のコンセプトに沿った内容になります。珍しくユーモアを散りばめた文章が続き、これが得点を稼ぐことになるのですが、ぬるま湯的でやや物足りない。(かといって、爆笑させるようでは吉本のセンスになってしまうし)


今回も月刊「文藝春秋」(950円)を購入、本編をナイフで切り取って読むという貧乏性丸出し読書になりましたが、審査員全員の選評と著者インタビュー記事も読めるので、単行本(1300円)よりずっとお得感があります。



コンビニ




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