大阪日暮綴



●「装潢師」という職業があった

 ・・ことを初めて知りました。読み方は「そうこうし」。どんな仕事?。答えは、日本画や書跡の修復、保存をする仕事です。
 先週末、中之島図書館の別館で「装潢師の私が出会っ国宝たち」というタイトルの講演会があり、大山昭子という方が、あの有名な「鳥獣戯画」などの名作をネタに保存作業のあれこれを解説されました。


私たちが美術館や博物館で鑑賞する昔の作品は制作当時のままというモノではあり得ず、何百年にもわたって丁寧に修理、保存されたものです。しかし、鑑賞するときは、そんな裏方の仕事のことなど全然意識しないで芸術価値のみを楽しみます。むろん、それで良いのですが、実は名作鑑賞の裏側で「装潢師」の地味な努力、研鑽がなされています。彼らはどんなに苦労しても展覧会パンフに名前が載ることはなく、生涯、無名のままです。だから、今回のように人前で自分の仕事の中身を話すことは極めて稀なことなのです。そこに興味をもって参加した次第ですが。


今回、大山さんが不慣れな講師役をしたのは、担当した国宝「鳥獣戯画」の修理中に、今まで知られていなかった絵が裏紙から発見されたからです。絵巻物を修理するために紙自体を裏から剥がしていくという、恐ろしくデリケートな作業を続け、そのなかで別の絵を見つけた。大発見や~、となりました。モナリザの絵に赤外線を当てたら下に別の絵があるのを発見した、というニュースの縮小版と言えるでせうか。


とにかくしんきくさい仕事です。効率やスピードを求められるビジネス世界とは対極にある、納期なんかあってないような仕事です。例えば、古い絵巻物の一部が欠損している。これを制作当時の姿に復元する場合、欠損部分が5センチ角だとしても、絵巻物と同じ紙で補修する必要がある。ということは、紙の材料や組成を分析することから始めなければならない。そこらへんの似た紙で繕うなんてのはアウトです。そのために、作業所には和紙を漉く道具を備えています。これで1000年前に作られた紙のそっくりさんを作るのです。ようやるなあ・・。


講演会に参加したもう一つの目的は、鳥獣戯画のレプリカが展示してあること。写真撮影はアウトでしたが、裸で陳列してあるので、眼前20センチの距離で見ることが出来ます。レプリカという点を大幅割引きしても、その絵の躍動感、腕達者ぶりは十分伺える。作者は不明ですが、平安時代にとんでもない達人=アニメの元祖がいたことに感心します。当時、描画材料は筆と墨しかなかったのであれば、どうして下描きをしたのか。現在のように鉛筆でうすく描いてから、という手法が採れないのなら、いきなり筆を走らせたのか・・それにしては上手すぎる。 ・・というわけで、素敵な美術展の裏側の仕事をちょっぴり垣間見させてもらったひとときでした。(7月30日 中之島図書館別館)

鳥獣戯画の一番有名な場面
鳥獣戯画 






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