読書と音楽の愉しみ

 

●玉岡かおる著「お家さん」を読む

 近ごろ、読書感想文の掲載が滞ったのは、この本のせいであります。Sさんから「この本、読みますか」とハガキで案内もらって、読みますと気楽に返事したところ、2作品を送呈頂きました。封筒あけて「あちゃ~」です。

文庫版ながら・・・
玉岡かおる「お家さん」 上下2巻 912頁
杉森久秀「天皇の料理番」上下2巻 700頁

案内ハガキ見て、「お家さん」はホームドラマ、「天皇~」はエッセイだとカン違いしていたのです。えらいもん、もろてしもた~と、悔やんでも後の祭り。自分流の読書スタイルは、常に2~3冊の本をかけもちで読む習慣になっており、こういう長編が混ざるとなかなかはかどりません。ほかに雑誌や週刊誌も読んでいるから鈍行もいいところです。


前置きはこれくらいにして、ま、読み応えのある力作でした。長編の文の端々に著者の全力投球の意気込み、熱意が表れていて、ダレない。
 なんの話かというと、戦前、隆盛を極めた大商社「鈴木商店」の栄枯盛衰物語です。鈴木商店の名は、もしや高校の教科書にも出てくるのではと思いますが、駄目男も「鈴木商店=焼き討ち事件」くらいの知識しかないので、実体を知る良い機会になりました。


鈴木商店なんて、ネーミングは軽いけど、戦前は三井、三菱という財閥と同じ規模を有した大商社でした。神戸生まれで、はじめは砂糖や樟脳を扱う小さい問屋でしたが、次第に扱い商品を増やして規模を大きくし、神戸の有名企業に成長する。その立役者が金子直吉という番頭です。本の主人公は鈴木ヨネという女社長ですが、ヨネは「君臨すれど統治せず」型の存在で、実際の経営は金子直吉と優秀な番頭が担い、ヨネは最後の承認のはんこ押し役です。だからといって番頭たちはヨネを軽んじていたのではなく、常に尊敬崇拝の対象でありました。


なにしろ、日露戦争や第一次世界大戦、関東大震災という大事件に巻き込まれるのだから、波瀾万丈の歴史をつくることになります。そんな中で鈴木商店が生んだ、あるいは大株主になった会社は、鉄鋼、造船、石炭、化学、繊維から食品に至るまでの80社を超え、一大コンツェルンを形成した。鈴木商店は滅亡したが、後継企業として現存するものに、日商(現在は双日)豊年製油、神戸製鋼、テイジン、川崎汽船、太陽鉱工、などがある。三井や三菱とガチンコ勝負したスケールの会社だったと分かるでせう。


ところで、本書は、主人公の鈴木ヨネが語る鈴木商店の盛衰ドラマであり、実在の人物や会社名が出てきてもドキュメントではない。著者がイメージを膨らませて描いたヨネに関わる人間ドラマはフィクションであります。しかし、物語を面白くさせるためのフィクションとドキュメントの境界があいまいなので、本書を読んで鈴木商店の歴史がわかったとカン違いしてはいけない。事実に近いけれど、あくまでフィクションであります。ドキュメントなら、主役は金子直吉になります。


そんな「虚実ないまぜて」のストーリーでありますが、後半、あの有名な「焼き討ち事件」の実体はどんなものだったのか、ドキュメントで知りたいと思いました。そこで、よりドキュメントに近い鈴木商店史はないかと探したところ、城山三郎の「鼠 ~鈴木商店焼打ち事件~」という本が図書館で見つかったのでただ今読んでるところです。幸い、大活字本なのでずいぶん読みやすいけど、これも上下2巻、700頁超のボリュウムがあって、なかなかはかどらない。そのうち紹介します。


なお、この「お家さん」は読売テレビ開局55周年記念事業としてテレビドラマ化され、2014年5月に放送された。鈴木ヨネ役は天海祐希、金子直吉は小栗旬が演じた。ごらんになった方もおられるかもしれない。

http://www.ytv.co.jp/oiesan/

お家さん

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