閑人帳


●貧乏性が空想する「豪華客船の旅」

 今年、大型客船による来日観光客が100万人を突破したそうです。毎日3000人くらいが日本各地の港に上陸していることになります。これだけ人数が増えたのは、船がどんどん大型化し、一度にたくさんの乗客を運べるようになったからです。一昔前は、天保山桟橋に3万トンくらいの客船が着いてるのを見て「でっか~~」と感心したものですが、いまじゃ3万トンなんて中型に格下げで、現在、最大の客船は22万トンというから7倍以上、もう、デカいの上にバカがつく、バカデカというサイズになっています。


そんな立派な船でクルージングを楽みたい、と思うのはリッチマン、けれど、マルビの駄目男は、そんなでっかい船、作るのになんぼかかるねん、動かしてどんだけ儲かるねん、と貧乏性丸出しの発想しかできません。 で、貧乏性的興味で、図書館の「船舶工学」の棚を探したら「船の最新知識」(池田良穂著)という素人向きの解説本が見つかったので借りました。なかなか楽しい本です。


◆部屋数はR・ロイヤルホテルの2倍
 この本に出て来る「フリーダム・オブ・ザ・シーズ」というバカデカ客船を例に、現代の大型客船のスケールや運営事情を学びます。
 この船はカリブ海のクルージングがメインだそうですが、16万トンというバカデカ客船です。全長338m、全幅56m、全高63、5m、デッキは18層(18階建て)。巨大高層ビルを横に寝かせたような、トンデモサイズの船です。これに、乗客3600人、乗員1400人、合計5000人が乗り込んで「楽しいクルージング」をします。


ビルが海に浮かんでるような・・・
クルーズ船


客室の数は1800室もあります。大阪・中之島の「リーガロイヤルホテル」が970室ですから2倍近い規模で、これが海に浮かんでるということになります。ワンフロアの廊下の長さは最長300m近くあります。あべの「ハルカス」ビルを横倒しにした感じです。貧乏性は「迷い子になったら、どないしよう」と、しょーもない心配をしてしまいます。実際、船内各所に案内図がないと迷い子は冗談ではないかもしれない。


◆儲かりまっか?
 こんなデカイ船、つくるのになんぼかかるねんとゼニの心配をするのも正しい貧乏性でありますが、現在のレートでは1200億円! ドヒャー~~であります。30階建ての高層ビルなら10棟ぶんになります。しかも、ビルに比べたら、船の寿命はうんと短い。つまり償却期間が短い。20年か25年で回収しないと儲かりません。


それで儲かりまっか? 貧乏性には最大の関心事でありますが、その答えは書いてありません。そこで、ネットで利用料金を調べると、同類の大型船では、数日間のクルージングで一人最低7万円くらいから30万円くらいまであり、意外と安いのです。一週間なら一日一万円というわけです。最低の部屋というのは、約15平米で、トイレとシャワー付き、ビジネスホテルのシングルルームと同じくらいですが、ベッドはツインなので、相当に狭苦しい感じです。貧乏性のくせに、こんなん、かなわんなあ、と文句垂れる駄目男であります。


むろん、部屋代以外にあれこれの付帯費用や個人消費があり、仮に一人20万円使い、稼働率が八割くらいの1500室とすれば、一航海当たりの売上げは3億円、30万円なら4億5千万円となります。年に40航海こなせば、120億円~180億円。これで、なんぼ儲かりまんねん? 純利益一割あるかな?


◆5000人が食べて、飲んで・・
 乗客、乗員、合わせて5000人も乗るのだから、水や食料の消費も膨大な量になります。水は、海水を真水に変える装置が2セットあり、一日に2700トンの水を供給できる。別途に5800トンを貯められるタンクもあるので、プールなどで大量に使っても余裕しゃくしゃくだそう。当然、下水処理場も備わります。


食材や飲料の消費もすごい。一週間の航海で使われるのは、牛肉9トン、鶏肉5,4トン、豚肉2,3トン、卵6,8トン、野菜37トン、果物16トン・・これらだけで大型トラックが10台以上要りそうです。ほかに、ビール2万本、ワイン2900本、ウイスキー200本、ミルク6000リットル・・。すごい量だけど、仮に、一人一日にビールを一本飲めば、毎日5000本要るから、計算は合います。


◆妄想は続く・・
 一隻の船に5000人もの人が乗って移動すれば、船内迷い子どころか、怪我人、病人もたくさん出る。時には暴力事件も起きるでせう。どうするのか。さすがに、船に交番や警察署までは用意されてないから、ルールとして船長に警察権が与えられるそうです。大事なお客さんをタイホ、なんてことがある。タイホして何処へ? もしや、船底近くの、乗客が寄りつかないところに鉄格子の「留置場」があるのか。楽しいクルージングのはずが洋上留置場暮らしに変更。これこそ「一生忘れられない船旅」になりますね。


◆デカすぎて港に入れない
 バカデカな船をつくるのは勝手だけど、デカ過ぎて使えない港がでてきます。だれでも思いつくのが港の水深です。船底が海底につかえて航行できない。だから海底を掘り下げる「浚渫」作業をしますが、面積が広いから莫大な費用がかかります。工事費は100%、税金でまかなわれます。だから、年に一回きりの寄港なんてケチな話ではとても付き合えない。


もっと難儀なのは「橋をくぐれない」ことです。「フリーダム・オブ・ザ・シーズ」の水面からマストのてっぺんまでの高さは63,5mあります。しかし、集客力抜群の横浜港はベイブリッジの橋下が50m、隣の東京のレインボーブリッジは52,4mしかないので、通れません。ぐやじい~~。運航会社も港もビジネスチャンスを逃してしまいました。


では、明石海峡大橋はくぐれるか? これは橋下が65mなので、ぎりぎり通過できます。とはいえ、この橋の高さは平均海水面での数字なので、満潮時はアウトになりそうです。
 いずれの橋も、設計時点では、クイーンエリザベスⅡ(7万トン)よりでかい船の出現を想定していなかった?。なのに、10万トン超の船が続々と出来てしまい、今さら対処の方法がありません。駄目男の想像では、そもそも橋の設計者が「貧乏性」ではなかったのか。将来の海運界の発展を見越して、大きめに設計しておけば、こんな情けない目に合わなくて済んだのに・・。


かように、貧乏人は、一円の金も使わず、パスポートもなしで豪華客船の空想の旅を楽しむのであります。あれこれ、しょーもない心配とアラ探しをしては、ビリ級の客から船長の身になってまで仮想体験する。儲かりまっか、なんて船主の懐具合まで気にするのだから、殆どビョーキです。


船内の中央大通りというか・・左右の窓も客室だけど、この部屋は海が見えないから安い。

クルーズ



アイデアに事欠いて? セントラルパークまでつくってしまった。両側に商店やレストランが並ぶ。
クルーズ 



大阪・天保山桟橋についた「クイーンエリザベス2」(7万トン)20世紀ではこれが最大級の客船だった。
クルーズ 




クルーズ 






スポンサーサイト