読書と音楽の愉しみ



●村上春樹著「パン屋を襲う」を読む

 今まで村上春樹の本を読んだことがなく、これからも読む気はないけれど、たまたま図書館の棚で目に入ったこの短編を借りた。わずか50頁ほどの短編だし、カット・メンシンクという人のシュールなイラストが気に入った。中身より外見で選ぶこともアリです。初出は1981年の「早稲田文学」だから初期の作品でせう。


空腹に耐えかねた若い夫婦が銃をもって深夜のマクドナルドを襲う。(本当はパン屋を襲うつもりだったが、深夜に開いてるパン屋がなかった)それだけのハナシでありますが、これを文学作品たらんとすればレトリックの腕前でカッコつけるしかない。たとえばこんな感じ・・・

カウンターの中の女子店員は銃を突きつけられて「彼女は「ようこそマクドナルドへ」の次をつづけようとしたが、出て来るのは無言の吐息だけだった。それでも営業用の微笑は行き場を失ったまま、明け方の三日月のように唇の端あたりにひっかかっていた」とか。

ま、べつに何ということもないハナシでありますが、軽く読み捨てにしてもいくばくかの余韻を残させる。これが作家のワザでありませう。(2013年新潮社発行)


村上春樹 


村上春樹 




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