読書と音楽の愉しみ



●内田樹ほか著「日本の反知性主義」を読む

 出版物には時たま「企画の失敗」もあるらしい。「知性」をテーマにしたはずの本書なのに、読んで見れば、読者の多くは「で、何を言いたいねん、この本は」という困惑のうちに読み終えることになる。勝手な想像でありますが、著者と編集者との意見交換、すりあわせが上手くいかないままに原稿を集めてしまったのではないか。「日本の反知性主義」というタイトルも今イチ意味不明だし、蛍光インクを使った安っぽい装丁も本の価値を損なっている。


目立たないが広がりつつある反知性主義に異を唱え、警鐘を鳴らす意図で内田樹氏が企画したが、全300頁の本書で内田氏の文はたった40頁しかない。なので、大半は内田氏が寄稿を依頼した9名のライターが自分なりに解釈した「反知性主義」論を寄せている。これが玉石混淆というか、大半は読む価値が乏しい文章。内田氏と白井聡氏両名の文を読むだけで本書の意図は十分理解できる。著者の中には「何を書けば良いのかよく分からないけど、頼まれたから書きました」と文頭で正直に述べている人もいる。オイオイ、ぜんぜん知性的ではないじゃん!


悪口はこのくらいにして、内容を短文で説明するのは難しい。内田氏が反知性主義(者)の見本だとして挙げている見本が「赤狩り」で名をはせたマッカーシー上院議員や世界情勢が変化するなかで、何かと言えば「ユダヤ陰謀論」を持ち出す人たち、といえば、ハハンと分かって頂けるかもしれない。そういう人が反知性主義者だという。今、アメリカで問題になっているトランプ氏と支持者もこの類いでありませう。


白井聡氏は小泉政権時代に世論調査、世論操作として使われた国民の階層分け(A層・B層・C層・D層)を引き合いに出して、この中で多数を占めるB層が反知性主義に該当するという。どんな人たちか。
 「小泉政権の構造改革論に肯定的で、かつIQが低い層」
 「具体的なことはよく分からないが、小泉純一郎のキャラクターを支持する層」・・であるそうな。小泉政権はこのB層の票を取り込む事に腐心し、結果、大勝利を得た。構造改革路線の難しい話はさておき、まずは小泉総理のキャラを押し出してミーハーレベルの支持者をごっそり取り込んだ。適菜収氏はこのB層を「マスコミ報道に流されやすい、比較的IQの低い人たち」と定義づけている。昨今でいえば、国会前で安保法案に反対するデモ隊の皆さんや同調者が該当する。

ついでに他の層も説明すると・・・(73頁)
A層・・構造改革に肯定的で、かつIQが高い人たち
C層・・構造改革に否定的で、かつIQが高い人たち
D層・・構造改革に否定的で、かつIQが低い人たち

こんな階層分けには異論もあるはずだが、考え出したのは某広告会社であって、学者や評論家ではないことが面白い。そして、国民の生活の安定=幸福という視点で考えると、一般国民から見て最もタチの悪いのは人数的には少数派の「A層」といえる。なぜなら、彼らこそ小泉政権下で「格差社会」を生み、固定化させた張本人だからである。(2015年3月 晶文社発行)


本 反知性



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