大阪日暮綴



●天然の「スーパー堤防」が街を守る ~大和川 右岸風景~

 自宅の南約2キロ、堺市との境界を大和川が流れています。数年前、散歩しているときに、川の右岸、左岸の風景に地形的な違いがあることに気づきました。もし、大雨等で大和川が氾濫したとき、右岸と左岸では被害の程度に大きな違いが生じると分かったのです。


下の「川の断面図」で示すように、右岸(大阪市側)は川の堤防の上面と街区(住宅敷地)がフラットになっていますが、左岸(堺市側)は堤防上面と住宅敷地に2m以上の差があります。


大和川


もし、川が氾濫したとき、右岸の町並みが水浸しになることはほとんどありません。しかし、左岸ではあふれた水が堤防下の住宅街に流れ込み、大きな被害を生みます。堤防が決壊すれば、左岸の町並みは一気に水没してしまいます。しかし、右岸は「決壊はあり得ない」構造です。溢水による軽微な被害で済みます。この地区において、右岸、左岸、どちらに住みたいですか、と問われたら、防災の面ではみんな右岸に住みたいと答えるでせう。となると、坪単価で相当の価格差があると思われます。


右岸のような堤防の姿を「スーパー堤防」(国交省では高規格堤防)と呼んでいます。堤防外側の土地をかさ上げして、堤防上面と街区がフラットになった、うんと幅広の堤防のことです。
 では、この大和川右岸の堤防は先人が土木事業でこしらえたスーパー堤防なのでせうか。いや、違うと駄目男は判断しています。これは天然のスーパー堤防、即ち、上町台地の南端部がつくった「微高地」のおかげではないかと考えています。大阪城から続く南北に細長い台地の南端がここで、比高はわずかでも、東、西、南よりは少し盛り上がってる。


ここが南端と考える根拠は、人工の大和川がここに通じてるからです。人手だけで掘削する川が敢えて丘陵地を切り開くはずがありません。一番低い地を選ぶでせう。だから、右岸のこの地区は堤防を築くというより、台地の端を掘り下げた、という土木作業だったのではないか。


巾の狭い台地の端っこ、という地形だから、スーパー堤防型地形は東西巾で300~400mくらいしかありません。この外側は左岸と同じように、堤防と街区は段差があり、河口近くまで続きます。ゆえに、貴重な天然の「スーパー堤防」地区と言えるでせう。


防災を重視した「スーパー堤防」構想は何十年も前から提案されていました。しかし、造成に物凄い費用がかかるのが難点です。その上に建てる住宅は当然割高になります。造成適地も限られます。2009年、「コンクリートから人へ」の公約をかかげた民主党が政権をとると、土木関連公共事業は「仕分け」作業において大幅にカットされました。あのレンホーおばさんは「100年に一度起きるかどうかという稀な水害にそなえる工事はナンセンス」とかいって、次々切り捨てた。あらためて言う、現実は「コンクリートも人も大事」であります。


あびこ大橋から見た大和川下流方面
大和川



右岸(大阪市) 堤防の上面と街区がフラットになっている。
大和川



左岸(堺市) 住宅は堤防の下にある。
大和川 



右岸の下流沿いに大阪市立大学がある。ここは堤防より少し低い。
大和川 







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