読書と音楽の愉しみ



樋野興夫著
「明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい」を読む

 スーパーウオーカー、石田俊雄さんから頂戴した本。帯に「人はどう生き、死ぬまでに何をするべきか」とある。よくある人生訓読本の一つですが、著者は順天堂大学教授を勤めるかたわら、「がん哲学外来」というオープンな対話の場を設けて、がん患者の相談にのっている。


がんの診察、治療だけでなく、不安や悩みを聴いて心のケアを手助けし、精神的な立ち直りをサポートするのが目的です。まだ数は少ないけど、有益な企画だと思います。設立のコンセプトが「偉大なるお節介」「暇げな風貌」というのがいい。その「がん哲学外来」を語る本です。


だったら、弱者である患者の気持ちに寄り添って、優しい言葉や励ましの言葉が並んでるのかと思いきゃ、ちょっと違うのですね。

 「命が一番大切と考えないほうが良い」
 「自分の人生に期待しない」
 「一人になることを恐れない」
 「経験より読書から学ぶ事が多い」
 「いい人生だったか、悪い人生だったか、は最後の五年間で決まる」

・・といった、逆説的というか、ネガティブな言葉が並んでいます。66頁には「60代になって自分のことしか考えていなかったら恥と思え」てな、きつい言葉もある。ふだん、ぼけ~と暮らして馬齢を重ね、ある日、ガンと診断されてうろたえ、初めて人生の来し方行く末を悩む愚かさ。中年過ぎたら自らの死生観をもちなさいと。


ぼけ~~の人生を改める方法の一つとして、日記をつけてみては、と説く。書くことで、日々の出来事、世間をきちんと観察できる。あるいは、読書会に参加して、敢えて難しい本を読んでみる。理解力は貧しくても、他人はどんな感想をもっているのか、知るだけでも意義がある。


著者は古今の箴言録が好きなのか、自説を箴言ふうに表現している。逆説的で皮肉っぽく感じられるのはそのせいです。ともあれ、病院は診察と治療だけの場ではなく、医師と患者の心の交流の場という新しいサービスをはじめた。但し、無料だからビジネスにならない。「偉大なるお節介」ができるのは、経営にゆとりのある、ごく一部の病院だけです。(2015年8月 幻冬舎発行)


ガン 本

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