閑人帳



●映画「お茶漬けの味」鑑賞


 図書館の棚で見つけたので借りて鑑賞。このタイトル見て「ああ、あれか」と思い出せる読者、何人おられるでせうか。一人もいなかったりして・・(涙)1952年(昭和27年)公開の小津安二郎作品です。


若いときは洋画かぶれで、邦画は見なかったのに、なぜかこれだけ観た。だから、とても印象に残っています。(封切りで観たのなら、当時は13歳だった。ホンマか?)場所は道頓堀だったような・・。


中年夫婦の亀裂と和解を描いたホームドラマ。夫婦は佐分利信と木暮三千代。これに、淡島千景、三宅邦子、津島恵子、笠智衆、鶴田浩二などが絡む。嗚呼、なづがじい・・。(みんな鬼籍に入ってしまったのか)。木暮三千代の和服姿が最高にかっこいい。美人だけどイジワルな女を演じてこれ以上の女優はいなかったと思います。そんな悪妻がラストシーンで「私が悪かったわ」と夫に謝るのだから、許すとも、許さないでおけませうか。


小津流の演出、撮影テクを注意深く拝見。得意のローアングル撮影は、カメラが床面から70センチくらいの高さだとわかる。食卓の天板の高さと同じです。カメラマンにとっては窮屈な姿勢を強いられます。小津専用の短足の三脚があったというから、慣れさせられたというか・・。


街角や室内のシーンでのこだわりもわかった。いずれも斜めのアングルは皆目なく、たて、よこが直角になる構図が圧倒的に多い。アルファベットの「T」字を床に置いて、タテ棒の下(手前)からのアングル。これに加えてローアングルで撮るのだから、すごく安定した画面になる。あまりにくり返しが多いので退屈感なきにしも非ず、であります。ワンカットの時間が長いのも特徴(クセ?)。一般的な絵づくりより1秒~2秒は長い気がする。これが独特の余韻を生むのかもしれない。


当作品は1952年に公開された。戦後わずか7年目であります。これを承知で鑑賞した人の多くは違和感を覚えるでせう。主人公の中年夫婦がそこそこの金持ちということは分かるが、サラリーマンなのに女中を雇ってるのである。戦後の混乱期においては、かなり珍しい。


実は、本作のシナリオを書いたのは、戦前、昭和10年ごろだった。この時代なら女中を雇うのは普通で違和感はない。小津監督はこの脚本の時代感覚を変えずに戦後に映画化した。観客が「なんかヘン」と思うのは当然です。しかも、ラスト近く、主人公が羽田空港から飛び立つシーンは「パンアメリカン航空」の旅客機が写るのだから、この場面は現在(1952年)を表している。戦後であることが明快にわかるのは、これとパチンコ屋が出るシーンだけ。要するに、戦前のよき時代と戦後の混乱、貧困時代がごっちゃになっている。ま、こんなことを詮索するのは戦前生まれ世代だけですけどね。感銘度でいえば、「東京物語」「晩春」に及ばず、三番目です。でも、懐かしさでは断然トップの小津作品です。



木暮三千代
お茶
 

佐分利信と鶴田浩二
お茶漬けの味 


左から、津島恵子、木暮三千代、三宅邦子、淡島千景
お茶 


笠智衆
お茶 


お茶漬けを食べて和解するシーン
お茶 


1950年ごろの羽田空港の見送り風景。地べたにフェンスがあるだけだった。
お茶 









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