読書と音楽の愉しみ



●石田衣良著「I LOVE モーツアルト」を読む


 著者がNHK-Eテレ「らららクラシック」の司会を務めている、というだけで読んでみたエッセイ。石田衣良、なんてヘンな名前の由来は本名石平庄一(いしだいら しょういち)の石平をフルネームにしただけだそうで・・しょーもな。テレビでは加羽沢美濃さんとコンビでクラシック音楽入門騙的な番組の案内役をしている。単なる一人の音楽ファンにすぎない、という素人目線での話がウケてるらしい。


クラシック音楽ファンには好きなきっかけになる「出会いの一曲」をもってる人が多いが、著者の場合はバッハの「ゴルトベルク変奏曲」だった。演奏者はグレン・グールド。これは共感できます。訥々と弾いてるようで、一度聴いたら忘れられない、脳天にビビビと響く演奏です。
 以後、あれこれ名曲を聴いてるうちに次第にモーツアルトにはまって行くわけですが、作家だけあって、音楽論的詮索より、モーツアルトの人物像、生き方についての興味が中心になります。


著者が選んだモーツアルトの曲が10曲、付録のCDに収められています。特に個性的な選択をしてるわけではなく、誰でもが好む無難な選曲です。交響曲の40番やクラリネット五重奏曲、歌劇「魔笛」のアリアなど、みんなが好む人気曲で、これは、もしかしたら本当の希望曲をガマンして「世間並み」に合わせたのかもしれません。自分の好みより、本の売れ行きのほうが大事ですからね。


ところで、駄目男の「出会いの一曲」は何かというと、少々渋くて、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」です。中学生の初めごろ、NHKのラジオ番組に「希望音楽会」という珍しいクラシック音楽番組があって、それのスタートに使われていました。きれいなメロディやなあとホレて聴いていたのですが、曲名が分かったのは何年も後になってからでした。むろん、今でも好きな曲です。


といっても、子供だから、石田衣良センセイと同じく、生活のなかでは歌謡曲からポップス、ジャズ、ラテンまで何でも楽しく聴いていました。ジャズとクラシックを覚えたのは「進駐軍放送」のおかげだから、ふる~~~であります。雑音だらけの真空管ラジオで聴いたものです。
 後年、NHKでは「映画音楽の時間」という番組ができて、これの大ファンでもありました。「第三の男」「禁じられた遊び」「道」「イルカに乗った少年」・・なつかしいですなあ。


クラシック音楽の魅力は、知らない曲との出会いの楽しさはむろん、同じ曲と何年、何十年と付き合いながら、リスナーとして成熟できることです。どんな風に?と訊かれても答えにくいけど。
 自分は別にガリガリのクラシックファンではないから、ジャンルを問わずなんでも楽しめます。あれキライ、これ知らない、と敬遠するのはもったいない・・・これも貧乏性ですね。(2006年3月 幻冬舎発行)


木製キャビネットの真空管ラジオ。
モーツアルト本 



モーツアルト






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