読書と音楽の愉しみ



●中川右介著「悪の出世学」を読む
            
~ヒトラー・スターリン・毛沢東~

 タイトルを見て、面白そう・・と思って選んだが、近頃、こんなに退屈な本を読んだことがない。なんで? 内容がもっぱら「人事問題」の記述だからであります。20世紀の三悪人が最高権力を手にするまで、どうして敵味方の渦をかき分け、のし上がっていったか。これを説明すると、人事の話しか書けない。戦場でドンパチ撃ち合い・・なんて場面はないのであります。閉口しました。


出自はB級ばかり
 そんな人事案件をここで再現するなんてサイテーなので、全部すっぽかします。改めて、この偉大な三悪人?の履歴を見ると、政治家、思想家としてきちんと教育を受けた者は一人もいない。ヒトラーは画学生、スターリンは神学生、毛沢東もエリートとはほど遠い勤労学生がスタートだった。出自で言えば、B級、C級というところ。


はじめからカリスマ性を発揮したわけでもない。みんな地味なレベルから世渡りの術を学び、ある時点で、パンパカパーンとデビューする(機会に恵まれる)これを繰り返して、敵味方を上手に操り、だんだん権力の集中を計って独裁者の道を歩む。
 それなら、政治家、権力者、みんな似たような人生になりますが、彼らのスゴイところは、敵をとことん粛清することです。生かしておかない。邪魔者は殺すというシンプルな発想と実行力がずば抜けている点で、20世紀の三悪人になれたわけです。人を殺すことに全く良心の呵責を起こさない(としか思えない)。一人殺すのも、一万人殺すのも、しょせん数の問題でしかない。


三悪人の共通項は「自国民を殺したこと」
 戦争で敵国人を殺すことは合法です。しかし、彼ら三悪人が大量に殺戮したのはすべて自国民です。(僅かの他国民も含む)これは日本人にはなかなか理解しにくい。日本の歴史において、権力者がごく短期間に百万人単位の国民を殺した、という例がないので、イメージしにくい。


彼ら三悪人の犠牲になった人はどれくらいいるのだろうか。これは本書には書いてないので、ネットで調べてみたけど、いろんな数字があってはっきりしない。数の少ない順にいえば、ヒトラー、スターリン、毛沢東 となるが、ヒトラーが150万人以上、スターリンが50万人~500万人、毛沢東が最大数千万人、というあいまいな数字になります。毛沢東の場合は、大躍進政策の失敗による餓死者、文化大革命による国民同士の殺し合いの死者も含めての数字です。


ヒトラーとスターリンは完全に否定されたが、毛沢東は「希代の殺戮者にして建国の父」という二面性を持っている。天安門にはでかい肖像画が掲げられていて崇拝の対象になっている。
 日本人の倫理感では理解不能でありますが、中国人は納得している。そんな中国人が、日本の戦犯を靖国神社に祀ることは許さないとイチャモンをつける。ヨソの国のことを言う前に、毛沢東の総括をしろよ、と言いたいですね。(2014年3月 幻冬舎発行)


アドルフ・ヒトラー
ヒトラー 



天安門に掲げられている毛沢東の肖像画
毛沢東 




悪の出世学 







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