読書と音楽の愉しみ



●吉田兼好著「徒然草」を読む

 「方丈記」「枕草子」を読めば、なんとなく「徒然草」も・・というノリで、何十年ぶりかで目を通すと、まあ、なんと俗っぽいエッセイでありませう。なな、なんで?・・「枕草子」のすぐ後で読んだからです。こんな名作を俗っぽいだなんて、吉田兼好さん、ス、スビバセンね。


選んだ本がまずかった。嵐山光三郎著「徒然草の知恵」という本で、~転ばぬ先の、転んだ後の~というサブタイトルがついている、現代人に対する人生訓的な内容だから、俗っぽく感じて当然であります。宮廷サロンでの雅なライフスタイルブックと世俗的ハウツーブックの違いはどうしようもない。全段の中から、人生訓になるようなピースだけ選んで解説しているので、これを「枕草子」と比べても何ほどの意味も無い。


とはいえ、兼好は徒然草を書くに際しては十分枕草子を意識していた。お手本にして、これに負けないスグレモノにしたいと意図していたという。内容は違うけど、表現スタイルは枕草子をイメージさせるものがある。そして「ヒマつぶしに書いてまんねん」と言いながら、全力投球で書いて日本の古典随筆ベストスリーに入った。


もう一冊、酒井順子の「徒然草 REMIX」も読みました。楽しく読めることではこちらのほうがずっと上です。というか、駄目男は酒井サンのファンであります。徒然草を酒井流にリミックスして、なんと、吉田兼好と清少納言の仮想対談を創作しています。むろん、堅苦しい文学論ではなく、サラリと軽いノリの、酒井さんにしか書けない文章です。これが楽しい。酒井流解釈では、清少納言がやや上から目線で吉田兼好を見ている。兼好さん、彼女にややコンプレックスを持っているのかも。


旅行好きでもある酒井さんは、巻末に兼好が訪ね歩いた京都のあちこちを自分も歩き回り、案内しています。これも気の利いたサービスです。


兼好ファンには余計なお節介になるかもしれないが、世上、よく引用されるフレーズのいくつかを書いておきませう。


家のつくりようは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。
 
これが一番有名かも知れませんネ


よき細工は、少しにぶき刀をつかふといふ。


家にありたき木は、松、桜
 
これなんか、枕草子の「春はあけぼの・・」の発想のマネでせう。


花はさかりに、月はくまなきをのみ見るものかは


◆勝たんと打つべからず。負けじと打つべきなり。
 
美空ひばりのヒット曲「柔」の、勝つと思うな 思えば負けよ、の歌詞はこれからとっている。(徒然草での勝ち負けは「双六」の技)


言うまでも無く、吉田兼好は人生訓を垂れたくて「徒然草」を書いたのではない。出家というポジションから、世俗にまみれてコセコセ生きることの虚しさ、無常感を伝えたかったのでありますが、一方で、ご当人も十分に俗人(ふつうの人)のライフスタイルを実践していて、頭かきかき、「ええかっこしてるけど、ワシもあほやねん、テヘヘ」みたいな、
そこらへんのオッサン暮らしを楽しんでいたのではないか。
 仁和寺の坊さんが石清水八幡宮へ参拝したときのドジな行動なんか、他人事のように書いてるけど、もしや、あのドジ坊主は兼好自身ではなかったのか。密かに疑っている駄目男であります。(「徒然草の知恵」 嵐山光三郎著 2012年 集英社発行  「徒然草REMIX」酒井順子著 2011年 新潮社発行)



吉田兼好
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酒井順子氏
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