読書と音楽の愉しみ



●近藤誠著「がんもどき」で早死にする人
     「本物のがん」で長生きする人  を読む

この本を読む動機は、下の宣伝文句に釣られたから。
 

「がんもどき」で早死にする人の養生訓

メタボと言われれば、ダイエットに励み
高血圧、高血糖と言われれば 薬を欠かさず

寒いときも野菜ジュースを飲み
みんなにマジメと言われ
がんになったらとことん闘いぬく
そういうふうに、わたしは生きたい


「本物のがん」で長生きする人の養生訓

毎日好きなものを食べ
酒も甘味も楽しみ
カロリーや血圧を
細かく勘定しないで

いよいよのときは
ありがとうと笑い
そういうふうにわたしは死にたい


(注)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
がんもどき=・自己増殖する ・転移しない ・自然消滅もある。
本物のがん=自己増殖する ・転移する ・完治はほぼ不可能

この文句。宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」のモジリです。
 がんに関する知見がかいもく無い駄目男は、がんもどきって、おでんの具材みたいやなと、しょーもない想像してしまいますが、他人事みたいに言ってる場合じゃない。統計上、日本人は3人に一人ががんに生命を奪われている。なのに、自分は余りに無知すぎる。で、大枚1000円を投資して本書を買ったのであります。


自分と同じくらいに無知な人は、この本を読んで困惑するのではと思います。著者はがん治療についての世間の常識に堂々と楯突いてる。常識が間違ってるのだと断言している。がん医療界におけるアンチ派、アウトサイダーです。以下、駄目男の感想を交えた内容紹介です。


■がん検診は受けるな
 早期発見、早期治療こそがん治療の基本と唱えられて、行政から企業まで「がん検診」が大いに普及しました。おかげで早期発見がすごく増えた。そして早期治療すればがんは治り、がんで死ぬ人は減るはずです。
しかし、実際は減るどころか、増えています。早期発見に何ほどの意味もない。患者が増え、死者も増え、では何のための早期発見、治療なのか。


この現実に対する著者の考えを要約すると・・・
1・技術の進歩でがんの発見がしやすくなった。しかし、本物以外の、ニセモノのがんもどき(悪性で無い腫瘍)もがんと診断されやすい。
2・がんが命を奪う前に、治療行為(手術・抗がん剤)が死を招く。


ゆえに、短絡した言い方ですが
・がん検診を受けると、悪性で無い「がんもどき」を発見、治療するリスクがある。だったら、検診自体をパスした方が良い。
・高齢者の場合。本物のがんとわかったら、治療による苦痛、再発の不安にさいなまれるくらいなら、「がん死」を受け入れて、痛みのケアだけを十分に施し、少しでも普通の暮らしを長く維持して、最後は餓死のように苦痛無く死ぬほうがベターである、と言ってます。


病気には人一倍敏感なはずの著者、近藤センセイ自身、一度もがん検診を受けたことがないそうです。最新型の高性能機器で身体中アラ探しをするなんて、どやさ!ってことですか。
 


■集団検診をやめたら「がん死」が減った
 本書36頁に、高齢化が著しい長野県泰阜村で、長年続けた集団検診を廃止したら、がん死が減ったと書いてあります。具体的にどうなのかとググッてみたら古めかしいHPが見つかりました。

http://www5.ocn.ne.jp/~kmatsu/gan009.htm

この記事によると、検診廃止前と廃止後では、がんによる死者の数は変わらず、胃がんについては、廃止後には三分の一に減っている。このケースを踏まえ、集団検診を廃止する市町村が増える傾向にある。


■乳がんや前立腺がんの8~9割は「がんもどき」
 検査方法や機器の性能向上で小さな腫瘍も見つけられるようになったけれど、当然、がんでない腫瘍も含まれる。しかし、日本では何故かこれも「がん」とみなして治療を始めてしまうケースが多い。がんもどきを本物のがんと誤診して「快癒した」の結果が得られたら、患者は喜び、医師は感謝され、病院は儲かる・・良いことづくめであります・・幻のがん患者が、どれくらいいるのだろう。


乳がんはマンモグラフィー検診の普及で発見率が高くなった。つまり、患者数が激増した。これで早期発見、早期治療が進んだのですが、死亡者は減らなかった。ということは、ほとんどの患者は「がんもどき」であり、少数の「本物のがん」患者は治療効果がなかったことになる。
 マンモグラフィー検診の普及は多くの「がんもどき」患者を作りだし、手術や抗がん剤による苦痛、副作用を強いられることになった。がんではないのに、がんと思い込むことで「再発の恐怖」も味わされる。同様に、子宮頸部の上皮内がんも99%はがんもどき、診断ミスが多いという。ちょっと信じがたいけど、事実なら大問題でせう。


前立腺がんも「PSA検査」なるものが普及して、患者の数が昔の30倍にも増えた。しかし、これで発見されるのは9割方ががんもどき。著者はこの検査は全くあてにならないと言う。中には本物扱いされて手術を受け、生涯インポテンツの身になる人いる。検診を受ける人に知識が皆無であれば、医師の指導、処方に素直に従うしかない。別の医師に相談しても「PSA検査」は受けるな、なんて言う医師は恐らくいないでせう。


■有名人の「がん死」・・治療死ではなかったのか
 まだ働き盛りなのにあっけなくがん死した、中村勘三郎や坂口良子、梨元勝、島倉千代子など、最良の治療をしたはずなのに生還できなかった。著者はこれらも治療死かも知れないという。人気商売ゆえ、カムバックを急ぐ気持ちは当然にしても、手術や抗がん剤のもたらす負担に耐えられずに亡くなってしまった。ひょっとしたら、やしきたかじんも?・・なんとも言えませんが。


■著者・近藤誠は獅子身中の虫か?
 この本を読む前に抱いていた大きな疑問がある。著者、近藤センセイの肩書きは「慶応大学医学部放射線科講師」です。この立場で「がんもどき」とかアンチを唱えている。しかし、慶応大学医学部は、がん治療に関しては普通に手術と抗がん剤という療法を用いている。つまり、医学部の身内に「がんもどき」論を主張する、反主流派がいるわけです。よって、医学部の方針に逆らうのなら辞めていただきませうと解雇できるはずです。なぜクビにならないのか。これが疑問でした。


答えは本書67頁に,著者自らが書いていました
。(茶色文字)
「組織検査でがんと診断されたのに「治療しない」患者の経過を23年間も観察できた。こんなことが出来た医者は他にいない。(略)こんな診察行為を許してくれた、慶應義塾の「自由」「独立自尊」の精神に感謝します」 


慶応病院に通うがん患者は、医学部での通常の検査や治療に納得できないとか、内容が理解できない場合に、セカンドオピニオンとして近藤センセイのいる放射線科を訪ねて相談できるわけです。がん科の担当医師にすれば、かなりムカつくことに違いない。しかし、少なくとも現在は許されている。逆に言えば、医学部は近藤「がんもどき論」「放置治療論」を打ちのめす論拠を持ち合わせていないことになります。同じ大学の医学部内に相反する「がん」治療思想があり、なぜか共存している。確かに、これは珍しいです。


■我が身を振り返れば・・
 本当はがんが巣くってるかも知れないのに、がん検診を受けないことで「がん患者」の自覚はないし、これからも自発的な検診は受けたくない。この先、なんらかの自覚症状ができて、がんもどきではなくて「本物のがん」と診断されても、幸いなことに、もう後期高齢者です。しゃーない、と受け入れる。(ホンマか?)
 馬齢を重ねるのも悪い事ばかりではない。ヒタヒタと追いかけてくるがんを振り返りつつ、本来の寿命切迫で逃げ切る。人生レースでの75歳、競馬でいえば、第四コーナーで「ガンダイオー」に追いつかれてしまったら、横目で見ながら、1馬身差でゴール(あの世)へ駆け込む。


著者は言う。原初0,1ミリの細胞が、がん細胞になるか、ならないかは運命としか言いようがないと。運命に抗うことは出来ない。さらに、現実には医師の治療方針に逆らうことさえ難しい。
 それは仕方ないとしても、しかし、せめて「がんには本物と偽物がある」「経過観察するだけの放置治療という考えもある」ことくらいは知っておいてもよいと思います。本書は新書版なので、2時間くらいで読めます。(2013年11月 幻冬舎発行)



がんもどき

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