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読書と音楽の愉しみ

読書感想文
08 /31 2018



●高橋洋一著
 「これが世界と日本経済の真実だ」を読む

 本書のような国際情勢を論じた本は賞味期限がせいぜい2年。それより古い発行のものはまず読む気がしないほど中身が陳腐化が早い。著者は元財務省(大蔵省)のエリート官僚。あわよくば最終、事務次官に出世できたかもしれない。しかし、売れっ子ぶりをみると、下野したのは正解でせう。東大の数学科卒というのがミスマッチだったかもしれない。


一番興味があるテーマは中国の現状と将来
 しかし、2年前の発行だから最新の情勢はなく、中国のGDPのええ加減さを論じて、経済発展はもう行き詰まってると説く。そして今、米中貿易戦争が勃発して形勢は中国に不利であります。人民元の下落、外貨の急減、「一帯一路」政策の不振から先行きを不安視する人が多い。そして、つい最近は習近平への反感を露骨に表す人もいて、写真のようにポスターに墨汁をぶっちゃける事件まで起きた。(即逮捕された)コツコツと神格化をすすめてきたのに挫折する可能性5割と予想します。規制が厳しいとはいえ、これほどの情報化社会で個人崇拝=神格化を目指すほうがおかしい。


高橋 本



国の借金1000兆円、のインチキ
 財務省を主として「財政再建至上主義」を唱えるひとが国の借金1000兆円だぞ、どうするのだ、といって国民を脅かす。実際、これを真に受けて心配する人が多い。マスコミも財務省の言い分をそのまま垂れ流すから、単細胞人間は「えらいこっちゃ」気分になってしまう。1000兆円の借金があるのは事実だが、これは国の資産がゼロみたいな勘定での表現であります。うんと話を絞って、100万円の借金がある人を想定してみる。100万円の借金があるからといって、その人は野外で裸の無一物暮らしをしているわけではない。家があり、家財道具があり、普通に服を着ている。趣味も楽しむ。つまり、資産があるわけです。これを無視して素っ裸の状態で借金だけあると仮定するのが1000兆円借金説です。


国には1000兆円の借金があるけど資産もある。本書では貸借対照表で細かい数字を並べているけど、資産のうち、換金価値が高いものを選ぶとおよそ650兆円ある。これをさっ引いた金額が本当の借金といえます。先進国でもふつうは借金で国政を賄っていて、これくらいの比率なら「えらいこっちゃ」のレベルに非ず、というのが著者の見立てです。この極めてノーマルな話を無視して借金だけ吹聴するのは財務省の基本姿勢であり、その下心は明快に「増税」であります。


日本の「左巻き報道」に騙されるな
 これは本書のサブタイトル。左巻の具体名は挙げていないけど、あの新聞、あのTV局、などを指す。彼らは「国の借金1000兆円」で国民の不安を煽り、反安倍政権思想に誘導する。さらに、高齢化や人口減という事態を踏まえて「もう経済成長はしなくていい」と国の活力を削ぐような思想を刷り込む。左巻という言葉は左翼を指すとともに馬鹿なメディアであることもあらわす。経済問題を感情論でしか語れない左巻メディアを数学の達人は許しがたいらしい。(2016年 悟空出版発行) 

高橋本 








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閑人帳

閑人帳
08 /23 2018



●少し硬めの報道番組

 ひとつのテーマを複数の専門家が論じる、えらく地味な番組があります。BSフジの「プライムニュース」で平日の午後8時から約2時間の放送。政治、経済関係のテーマが多いけど、昨夜(22日)は「中小企業の生き残り策」という割合身近なテーマでした。ゲストのHILLTOPの副社長、山本氏の話が面白くて聴き惚れてしまいました。中小企業といえば、朝から晩まで汗水たらして働いて・・というイメージが強いが、この会社はそんな常識から脱却し、なるべく働かないでしっかり儲けるという理念?でどんどん改革を進め、社員わずか120名の会社なのに、上海やシリコンバレーにまで支社をつくって稼いでいます。


・・というような話は平易に聞けますが、もっとカタブツのテーマもある。米中貿易戦争問題、安保問題、日銀の金利政策、といった話題はある程度予備知識がないとついていけない。しかし、ひとつのテーマに正味一時間半くらいかけて解説、議論するのだから、普通のニュース番組より10倍中身の濃い話が聞けます。国会議員もしょっちゅう出て来ますが、話の内容でいかほど問題を学習しているか、ほぼ分かります。


この番組よりややポピュラーなのが、BS日テレの「深層ニュース」一時間足らずでひとつテーマを解説、議論します。さらに、これらの番組をうんとミーハー化したのが、地上波での池上彰氏が解説する番組です。池上氏は、本当はもっとレベルの高い解説をしたいのかもしれませんが、なにしろ視聴率優先の一般向け番組だから、それは叶わない。数年前に比べたら出演番組が増え、さらにミーハー化が進んで普通のバラエティ番組に落ちぶれてしまい、自分は見なくなりました。いま、TV局は池上氏とは「ニュース解説芸人」として付き合ってるのかもしれません。


このような、視聴率の取れない地味な番組は、本来、NHKが企画するのがスジではないかと思いますが、なぜか無い。むしろ、NHKもずんずんミーハー化していて、もはやカタブツ番組には興味がないのでせう。


プライムニュース(BSフジ)
プライムニュース







読書と音楽の愉しみ

読書感想文
08 /21 2018



●下重暁子著「家族という病」を読む

 よくもこんなにイヤミな題名をつけたもんだ。まあ、幻冬舎らしいセンスも感じますけどね。でも、この題名に惹かれて買った人も多いと思う。ヒットしたのかどうか知らないけど、中身より題名のインパクトで売れたこと確かでせう。著者、下重さんはNHKのアナウンサー出身らしいけど覚えていない。


一家団欒という言葉に象徴されるような「幸福な家庭」なんて本当にあるのか。幸せぶってるだけではないか。という根源的な問いから著者自身の生い立ち、人生を振り返って、自分は幸福な家族の一員ではなかったと断じる。父は軍の高官だったので経済的に困ることはなく、母にも溺愛された、という境遇からみれば「食うのに精一杯」な庶民にはとても贅沢な、幸せな家族に思えてしまう。幸福の次元が違うのであります。


真に自立した人生を送りたければ、家族のしがらみを捨てよ、と説くのでありますが、インテリで、実際、自立できている著者だから言えるのであって、シモジモの民は共感できないでせう。ただ、著者も言うように、現代の家族における不幸、親殺しや子の虐待死事件の増加は家族における「病」の増加であり、家族であるゆえに解決が難しい。・・というわけで、なかなか著者の家族論にはついていけないのでありますが、世間づきあいという点まで見方を広げれば納得できることもあります。でも、著者のような洞察力の高い人とつきあうと、自分は常に観察されてると負い目を感じてしまいそう。自分とちょぼちょぼの、スキマだらけの人間と付き合うほうがうんと楽しい。(2015年 幻冬舎発行)



家族という病 








閑人帳

閑人帳
08 /19 2018



●どうしてこんなに上手いのか
       
~高校ダンス部選手権大会~

 なにげにyoutube で上記の大会のようすを見て、出演者のダンスの上手さに驚きました。学校の部活としてトレーニングを積み、優秀なチームが全国から集まってワザを競う。と書けばカンタンですが、わずか3分ほどのダンスのためにどれだけ厳しいトレーニングが要るか、門外漢でも想像できます。この手のダンスといえば、スポーツ応援のチアダンスくらいしか知らなかったので、それとは段違いにハイレベルなパフォーマンスに驚いたわけです。なんか、今までの「高校生」のイメージがぶっ飛んでしまった。


大会へエントリーする学校が増えているところへ、昨年は堺市の登美ヶ丘高校のチームが「バブリーダンス」とかのテーマでド派手なパフォーマンスをやり、大会優勝を遂げた上に、NHK紅白歌合戦にも出て、一挙に知られるようになった。(紅白は見なかったので不詳)はじめて動画を見たときは「え?、これ高校生かい」とびっくりしたものです。これを見たら、今まで普及していた「よさこい踊り」なんかダルくて見ちゃおれん、という感じですね。スピードとキレが全く違う。恐らく、動作の誤差は100分の1秒くらいに収めるくらいに練度が高い。「よさこい」だったら10分の1秒くらいは許されるって気がします。しかし、よさこいの経験が基礎にあっての進歩かもしれない。


それにしても、限られた時間、予算のなかでこんなに上達できることが不思議に思えます。あんたら勉強してるんか、とギワクの眼で見たくなります。かつ、チームのダンスだから、主役を張って有名人になれるわけでもない。みんな脇役で終わる。また、指導者が有名人というわけでもないらしい。ならば、個人の内発的なエネルギーが進歩向上の糧になっているのか。化石人間には理解不能でありますが、見れば元気がもらえるかっこいいダンス。関係者だけの催事に留まらず、オープンな公演も望むところです。

●視聴回数 6300万回という「バブリーダンス」
後半の映像でダンサーが肩にかけてる黒い箱は、バブル時期の携帯電話器ということを、若い人は知らないかも
https://www.youtube.com/watch?v=Lxr9tvYUHcg

バブリーダンス






読書と音楽の愉しみ

読書感想文
08 /15 2018


●鳥海 修著「文字をつくる仕事」を読む

 私達が新聞や本をよむとき、印刷された文字の書体について、なんという名前の書体か、誰がデザインしたのか、なんて気にすることはまあありませんね。しかし、その文字にはすべて書体名があり、デザインした人(グループ)がいます。そんな文字のデザインについてのウンチクを語っているのが本書です。こんな本、誰が読むねん、と訝りつつ、実際、退屈なページもあるけど読んでみました。


A新聞を10年間購読したあとB新聞を読むと、ん?・・と違和感を覚えることがあります。新聞名が変わるのだから当然ですが、記事紙面だけ見ても「なんか違う」という感じです。その原因が書体の違いのせいだと気づく人は少数ですがいます。そう、各社同じように見える書体が実は異なっています。朝日、読売、日経・・と各社専用の書体で紙面をつくっている。なおかつ、何十年かに一度、全部作り替えることがあります。それを請け負っている人の一人が著者で、書体デザイナー(フォントデザイナー)と呼ばれています。


書体は新聞社のように専用のものといろんな印刷物に使う汎用があり、デザイナーがこだわるのは汎用の書体です。自分のデザインした書体が世間でたくさん使われることでお金になるし、やりがいもあるからです。そして、一番チカラを入れるのが「本文明朝体」。新聞や本で普通に使われる書体です。では、優れた書体の条件はなにか。
 □読みやすいこと
 □美しいこと   

この二点です。言い方を変えると、良い書体とは、「水のような 空気のような」書体、即ち、個性や主張は許されない。読者に「書体」を意識させるようなものはアウトです。


こんなに厳しい制約のもとでデザインしたら、逆に、良い書体、悪い書体が生まれることなく、全部ワンパターンになってしまうのではと思いますが、そこがまた違うのですね。ものすごくビミョーな相違がある。優劣のある証拠に、著者がつくった「ヒラギノシリーズ」という書体は2005年にグッドデザイン賞を受けています。要するに、彼らプロに言わせれば、書体は年々進化、改善されてるというのですが、一般人(読者)には全然気がつかないくらいのミクロ的改善です。


そんな新書体開発の熱意が昂じると、本文明朝体においても、時代小説向きの書体とか、翻訳小説向きの書体とか、ついには「藤沢周平」作品にぴったりの書体をつくろう、なんてことを言い出すデザイナーが出て来る。言うのは簡単だけど、新しく書体を開発するには一万~二万字をデザインしなければならず、今はコンピュータを駆使するといっても、膨大な労力と時間がかかります。私達一般人が知らないところで熾烈な開発競争が行われているわけです。


逆にいえば、漢字や仮名文字には汲めども尽きぬ魅力があるということでせうか。読みやすい、美しい、というテーマでまだまだ追求するだけの奥深さがある。こんなデリケートな表現ができる文字って、日本語だけではないかと思いますが、それは一人よがりで、外国語にはそれぞれの「読みやすい、美しい」書体があるのでせう。(2016年 晶文社発行)


明朝にもいろいろな書体がある
文字をつくる仕事 



大正時代の活版文字の書体
文字 



文字 






閑人帳

閑人帳
08 /14 2018



●賢い?・・がめつい?・・「獺祭」商法

 好事魔多し・・先月の西日本豪雨で山口県の旭酒造の酒蔵が浸水被害を受け、大わらわであります。製品や仕込み途中の酒がほとんどパーになってしまった。その数、65万本~90万本というから常に強気の社長さんも真っ青です。被害額10億以上とか。杜氏をおかない、オールコンピュータ管理による製造装置でン億の借金を抱えているのにこのきつい試練であります。


65万本以上の酒、仕込み品を全部廃棄するのか。する、が常識でせうが、一部はしない、という選択をしました。酒の品質を保てる状態のものをB級品として発売することに決めた。品質、味、大丈夫かなあ。もちろん、味や安全面のチェックはしますが、小売り3万円台の高級品と普及価格の吟醸酒をブレンドすることもあるらしい。で、販売価格は1200円。ウイスキーのシングルモルトどうしの掛け合わせみたいなことをする。ほんま、だいじょうぶでっか?。


この大ピンチに助っ人が現れた。漫画家の弘兼憲史氏です。山口県出身なので同郷の士のピンチを座視できないと応援役を買って出たらしい。そして、この怪しい?B級酒に「島耕作」なるブランドをつけ、販売すると記者会見まで開いてPRした。(下の写真)
 これって、逆境を跳ね返す賢い商売なのか、それとも単純にがめつい売り方なのか。どちらにせよ、獺祭というブランドなればこそ出来るきわどいビジネスでせう。このニュースをWBSで知って、明くる日、図書館のそばにある扱い店に行き「あの~、ダッサイのアレを・・」というと、店員さん「今日午前中に割り当てぶん、全部予約で埋まりました」とつれない返事。不良品を売りつけてるのに売り切れ? んなもん、買うヤツがアホやねん、ということにして、ダサイ自分を納得させたのであります。


WBSより
ダッサイ 

ダッサイ 



ダッサイ



閑人帳

閑人帳
08 /13 2018



●映画「ジュラシックワールド」 鑑賞

 たまにはエアコン止めなくては・・そんな不純な動機で映画館へ。夏休みで子ども向きの作品が多いから選択肢が乏しい。で、この映画を選んだのですが、中身はしっかり子ども向きの映画でした。涼みがてらに出かけたのに、映画の副題が「炎の王国」なのを見落としていて、火山の噴火や森林火災で涼むどころか、アジジ、アジジな場面がたっぷりありました。


ハリウッド製恐竜シリーズも、はやネタが尽きたのか、この作品ではワルの一味が恐竜を独占し、かつ、新製品(新種)開発もしてオークションで販売するという話をつくりました。さりながら、顧客が恐竜を競り落としたとして、どうするのでせうね。檻に閉じ込めて見世物にするのか。・・ま、そんなこと気にするまえに映画は終わってしまいますが。
 CGの絵づくりはよく出来ているけど、全編、恐竜がドタバタしてるだけで面白くない。最後の30分は退屈しました。東宝の「シン・ゴジラ」のほうがずっと良かった。(アポロ シネマ)



ジュラシック








閑人帳

閑人帳
08 /12 2018



●TVで納涼・・ドローン撮影の山岳大観

 けふも暑くて引きこもりの一日でしたが、夜のNHKーTVで立山連峰の風景をドローンで撮影した番組があって、涼感満点でした。特に冒頭の「称名の滝」の近接撮影はドローンでなければできないワザで、水しぶきを浴びるようなリアリティがある。実際は放映時間の何十倍もの撮影をして「ええとこ」だけ編集したものと思われますが、今後、風景撮影で大いに活躍しそうです。滝の上部の峡谷なんか、ヘリが入れないくらい狭いので、小さいドローンしか撮影できない場面です。案内役の山岳カメラマンがドローンの活躍に「嫉妬を覚える」 と言ってましたが、実感でせう。(8月11日)


落差350mの「称名の滝」の最下段を撮影するドローン。(中央右手の白い点。サイズは40×40cmくらい)
立山


称名の滝の上流は「廊下」と呼ばれる狭い谷。
立山


ドローンが撮影した、立山から剱岳への縦走路風景
立山 


立山 


立山 





読書と音楽の愉しみ

読書感想文
08 /11 2018



●佐藤優著「読書の技法」を読む

 読書人にもピンとキリがあって、佐藤氏はまちがいなくピンの一人でせう。作家だから、読むより書くほうが仕事では、と単純に思ってしまうが、書くためには膨大な読書が必要であります。では、どれくらい読んでるのか。一ヶ月平均で300冊だという。え?・・30冊の間違いでは? いいえ、300冊です。


まず、献本が月100冊くらいある。これは義理もあるから全部読む。それから新刊本を70~80冊、さらに古本を120~130冊くらい読む。これは平均で、多いときは月に500冊読むことがある。一日に10冊以上読むのが佐藤氏の読書習慣であります。その数の多さでビックリしてしまいますが、問題は中身。大半が哲学、思想、歴史、政治、法律、語学関係の本で、ちゃらい小説なんか皆目ない。(たまにマンガも読むらしいけど)


本は難易度で三種類に分けると著者は言う。「簡単に読める本」「そこそこ時間がかかる本」「ものすごく時間がかかる本」で、簡単に読める本は1~2時間、そこそこ・・本は政治や思想に関する本が多く、一週間くらいかかることもある。ものすごく時間がかかる本の見本は、田中美知太郎「ギリシャ語入門」改訂版で、一年以上かかった。月間300冊のうち、7~8割は一冊1~2時間で読める。これくらい早く読まないと「書く仕事」の時間がとれなくなってしまう。


佐藤氏は独自の速読術をもっている。では、世間に流布する速読術の本を素人が読んでも役立つのか、といえば、アウトだそうだ。そもそも、速読ができるのは、本の内容に関してある程度知識を有していることが必要である。哲学書なんか読んだことのない人が「哲学入門」なる本を速読できるわけがない。速読を学ぶ前に膨大な知識のストックが必要であります。そんなにムリしないで、普通に読んでスピードアップしたければ、1頁を15秒で読むトレーニングをしなさいと。う~ん、これだって相当に難しい。


こんなにモーレツに読みまくるのはなぜか。人生は有限、読書に費やせる時間は限られている、という切迫感のせいであります。時間がないのに、読みたい本はうじゃうじゃ湧いてくる。そんな気分は多少理解できます。駄目男が年間30冊の本を読めば、50年間で1500冊。たった1500冊、という少なさにガクゼンとします。これぽっち読んで何ほどの意味、価値があるだろうか。この無意味感は常にあります。(2012年 東洋経済新報社発行)



読書 佐藤優 





読書と音楽の愉しみ

読書感想文
08 /03 2018



●野坂昭如著「火垂るの墓」を読む

 著者の少年時代の実体験をもとに書かれた短編で、文庫版でも34頁しかない。しかし、本作品は「アメリカひじき」とともに直木賞を受賞した。新潮社で文庫化され、昭和47年以来76刷と地味ながら長く読み続けられたロングセラーです。尤も、人数でいえば、本を読んだ人より、アニメで観た人のほうがずっと多いような気がする。アニメは観たことがないので、出来栄えはわからないけど、著者と同世代の、つまり、戦争の記憶がある人は原作を読むほうがずっと共感しやすいと思う。


ところで、この本を読んだ動機は作品自体の評価とは別のところにあります。産経新聞6月24日の文化欄「道ものがたり」で本書がとりあげられ、作品の舞台になった神戸市灘区界隈を紹介しています。ライター、福島敏雄が注目したのは「作家はどこまでウソが許されるか」という、なんだか穏やかでない話です。もちろん、小説=フィクションだからウソが当たり前であること前提にしつつ、本書以外の自伝的作品におけるウソの記述に首をひねる・・というルポです。


著者の14歳時の空襲体験は作家としての原体験であって「火垂るの墓」以外の作品でも度々語られている。その生い立ちや人間関係の記述が安定しない。そんな細かいこと、どうでもええがな、と思うのですが、ライターは気になったらしい。また、著者自身、晩年になって今まで「自伝」として書いてきたことの真偽を反省しているようにも思える。
 最後に、野坂昭如はペンネームで、本名はの姓は「張満谷(はりまや」という変わった名前だった。そして中央区春日野の墓地に代々の墓があって、毎年6月(空襲を受けた月)に墓参りに出かけたと「ひとでなし」という作品に書いている。


ライター氏は春日野墓地に出かけて墓を探した。管理事務所でも登録簿を調べてもらったが、張満谷という名の墓はなかった。だからといって、戦争を描いた文学作品のなかで傑作といわれる「火垂るの墓」の評価を貶めることにはならない。それを認めつつ、ライター氏は「作家の倫理」に一抹の不信感を抱いて文を閉じている。


「火垂るの墓」の舞台を訪ねる
http://www.hyogonet.com/drama/hotaru/index.html

アニメ制作では小説で描かれた神戸や西宮の現地をロケして、かなりリアルに風景を再現しているらしい。上記のブログでその説明があります。下の写真は、14歳の主人公、清太と4歳の妹、節子が意地悪な親戚の家を出て、池の畔に穴を掘って暮らす場面に出て来る「ニテコ池」。ここでたくさんの螢を見た。節子はこの穴で餓死し、一ヶ月後、清太も三宮駅構内で、誰にも看取られずに餓死する・・という筋書きになっている。


ニテコ池 遠くの山は甲山
ほたるの墓 ニテコ池

(昭和47年 新潮社発行(文庫版)
表紙


半畳雑木林

半畳雑木林をつくりませんか
08 /01 2018



●「半畳雑木林」今年のラインナップ

 今年はなぜか発芽率が悪く、発芽しても成長が遅いという不作の年になりました。加えて猛暑。小さい鉢に植えているから土自体がえらく高温になってしまい、水やりは水分補給とともに「水冷」にもなります。それでも、モミジバフウの一鉢は葉が腐ったように三日で枯れてしまいました。常緑樹より落葉樹のほうがデリケートみたいです。

今年のラインナップは、モミジバフウ、シナアブラギリ、シマトネリコ、ナンキンハゼ、ザクロ、クルミ、ムクロジ、センダン、シラカシ、樹種不明、の10種。


今年の半畳雑木林 






 dameo

■10年続けた<快道ウオーキング>を改題しました。
■《手づくり本》の研究は、大事なことは紙に記録しようという、アナログ爺のレジスタンスです。お問い合わせは【拍手ボタン】押してコメント欄からどうぞ。内容は非公開です。
■下記のカテゴリーが趣味をあらわしています。
■ニックネームはdameo(丸出駄目男)です。
■1939年大阪生まれ