FC2ブログ

読書と音楽の愉しみ

読書感想文
06 /26 2012


●亀井勝一郎著「大和古寺風物誌」を読む

 著者名、書名ともしっかり覚えているので、昔むかし、たぶん二十代で読んだのではと思うが、開けてみると皆目記憶がない。途中で読み止めたのかもしれない。旅心を誘う書名に惹かれて買ったのはいいが、読んで見れば、若造には難しすぎて、放り出してしまったと。


50年の歳月を経て今読めば、素晴らしいエッセイであります。大和の古寺探訪が好きな人には、これほど上等な教科書は無いのでは、と思うくらいであります。何が上等なのかといえば、古寺や仏像の見方や解説をしているのでなく、著者の「思いのたけ」を吐露しているからであります。世間で、学会でいろんな見方があるにせよ、まずは亀井流の「思い」を書く。加うるに、これでいいのダ!と読者を納得させてしまう筆力とそれを裏付ける、うんちくの山。持論を自信をもって述べながら、謙虚さも失わない、このバランスの良さも読者を惹きつけてやまないところでせう。


・・と、ほめておきながら、こりゃちょっとヤバイで、とも思いました。大和の古寺めぐりの前にこれを読むと、著者の「思いのたけ」が強いぶん、先入観を持ちすぎてしまう恐れありです。「司馬史観」ならぬ「亀井史観」に洗脳されてしまいそうです。ゆえに、ある程度、古寺巡りをこなした人が読むほうがベターではと思います。自分の感想や評価との違いを見つける愉しみもありますし。この本を読んだら、もう一度現地へ行きたくなった・・。これが最高ではありませんか。


■文章紹介・・「薬師寺」のなかの ~塔について~ より

 ・・塔は幸福の象徴である。悲しみの極みに、仏の悲心の与える悦びの頌歌であると云ってもいい。金堂や講堂はどれほど雄大であっても、それは地に伏す姿を与えられている。その下で人間は自己の苦悩を訴え、かつ祈った。生死の悲哀は、地に伏すごとく建てられた伽藍の裡に満ちているであろう。しかし、塔だけは天に向かってのびやかにそそり立っている。悲しみの合掌をしつつも、ついに天上を仰いで、無限の虚空に思いを馳せざるをえないようにできあがっているのだ。人生苦のすべては金堂と講堂に委ねて、塔のみは一切忘却の果てに、ひたすら我々を天上に誘うごとく見える。しかも、塔の底には仏の骨が埋められてあるのだ。(以下略)


著者の大和古寺巡りは、昭和12年~27年ごろまでと、もう半世紀も昔のことですから、寺やその環境の風景は大きく異なります。薬師寺なんか、荒れ果てた寺として描かれていて、それなりに興味が湧きます。
 古寺めぐりに誘う本はたくさんあるけれど、その賞味期限の長さにおいて、これほどのスグレモノは珍しいでせう。歴史ファンにも愛読者が多いかもしれません

(大活字本で読む・底本は新潮社文庫「大和古寺風物誌」)


■亀井勝一郎のプロフィール
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%80%E4%BA%95%E5%8B%9D%E4%B8%80%E9%83%8E


斑鳩・法起寺三重塔
本 大和古寺風物誌

スポンサーサイト



たまには外メシ

たまには外メシ
06 /22 2012


●人生最後の三つ星割烹・・北新地「弧柳」

 三年前、2009年の春先に、友人でショップデザイナーのOさんから電話あり「このあいだ北新地で割烹の店、設計しましてん。気が向いたら行っておくれやす」と。あ、そう、フンフンと聞いたものの、すぐ忘れてしまった。


翌年の暮れ、再度電話あり「あの店、ミシュランの★★取りましてん」「ほんま、そら良かったなあ。ところで、料理、なんぼくらいするの?」と尋ねると「メニューはおまかせコースのみで、1万円と1万2千円の二種類」「ドヒャ~~」一言絶句。 かくして、また一年が過ぎたのでありました。


そして、昨年の暮れ、なにかの記事で、この店が★★★に昇格したことを知りました。べつにOさんに義理はないけれど、これ以上、知らん顔するのもイカンガーと、三年以上たってようやく出かけた次第であります。晩メシに一万円以上使うなんて、清水の舞台どころか、スカイツリーのてっぺんから飛び降りる勇気が要るのであります。


店は、新地の一番南の通り、ANAクラウンプラザホテルの北西向かいにあります。キャパはカウンター12席のみ。オープンキッチンなので、取り澄ました、堅苦しい雰囲気は全然ありません。オーナーの松尾慎太郎さんは、法善寺の「㐂川」で修行した、誠実で研究熱心と評判の若手です。


料理の印象を一言でいえば、ダサい形容ながら「究極のチマチマ料理」になりますか。すべてのメニューがボリュウム感最小。その分、素材と味付けの凝りよう、こだわりようは、家庭料理と次元の異なるものです。お客さんは美味しさの「非日常体験」を期待して来る。それに応えるのが松尾さんの仕事です。だから、コストパフォーマンス優先の発想では、かようなレシピは生まれないでせう。コストを意識する家庭料理とこの店の料理とは乖離(プッツン)している。比較することがナンセンス。だから愉しい。そうでも思わないと、スカイツリーから飛び降りた意味あらしまへんがな。(なんか、ヤケクソです)
 しかし、中に、義理や付き合いで来た人の中には、愉しくなかった人もいるはず。愉しくない理由は、コストパフォーマンスを考えてしまうからです。あの金で、ワタミなら6回は行けたのになあ・・嗚呼、グヤジイ~。


なんせ「人生最後の」の冠をつけるくらいだから、気軽には行けないど、結婚記念日とか、人生の節目の記念なんかに使えば、ヨメさん喜ぶこと請け合いです。ものは考えようで、自分が、毎月、医療費に5千円とか1万円を使わざるを得ない病人や被介護人になったことを思えば、この外メシのほうが、なんぼ幸せな投資であることか。病人になってから「行っとけば、えがったに。グシュ」と悔やんでも後の祭りです。


料理はすべて酒肴として出されるので、飲めない人は美味しく味わえないと思います。飲まない場合は昼膳があります。(下のHPの「店舗の紹介」頁をご覧下さい)


■弧柳のHPはこちら・・・メニューも出ています
http://www.koryu.net/index.php



奥、左の人が松尾さん
弧柳



刺身には醤油、わさびと海水(白い器)の二つのタレが供される
弧柳



サメの心臓の刺身
弧柳



島根県高津川の天然鮎
高津川って?・・検索すると、島根県西部、津和野のあたりを流れる「日本一の清流」を謳う川でした。一級河川で流域にダムが一つもないのは、日本中でこの川だけとのこと。天然鮎が遡上するので、鮎釣りファンには人気高いそうです。
弧柳

高津川上流風景
高津川

高津川観光PRのHP
http://www.kankou-shimane.com/mag/08/06/takatsu.html

読書と音楽の愉しみ

読書感想文
06 /21 2012


●人生最後のバッハ「ヨハネ受難曲」鑑賞   ~大フィル6月定期演奏会~

 指揮者、ヘルムート・ヴィンシャーマン、92歳。彼は引き受ける仕事の全てが「人生最後の仕事」という覚悟をもって舞台に上がってるに違いない。長身でスリムな体つきは枯れ木のごとくでありますが、指揮は漢字でいえば楷書のようにかっちりしたスタイルで、かつ情熱的。演奏時間2時間の大曲を疲れたそぶりも見せずに振り終えた。いやもう、すごいスーパージイサンであります。


クリスチャンならいざ知らず、このような宗教曲は、有り体に言って、あくびをかみ殺しながら聴くのが普通でありますが、今回、退屈しなかったのは、演奏のレベルの高さ、特に福音史家役のテノール、マルティン・ペッツウオルトの美声に聴き惚れたこと、また他のソリストや合唱団の技術の高さゆえと思います。オーボエやフルートのソロも実にきれいな音色だった。


もう一つ、退屈しなかった理由は、滅多に聴けない珍しい古楽器、リュート、ヴィオラ・ダモーレ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、小さいオルガンの演奏が聴けたこと。ダモーレもガンバも、古楽器特有の「すねたような音色」が、かえって新鮮に聞こえた。ガンバ奏者のおばさんが、なんだかアウンサン・スーチーさんに似ていました。


曲は、イエスが裏切り者のためにゴルゴダの丘で処刑され、遺体が埋葬されるまでの悲劇を、歌と小編成のオケで綴るのでありますが、終曲の約10分はまことに美しい旋律とハーモニーで、宗教宗派を越え、聴く人全てを感動させる名曲です。


安らかに憩い給え 聖なる御骸よ
御身を嘆くことは もう致しません
安らかに憩い給え そして私をも憩いに導き給え・・・


このような詞がなんども繰り返される。神ならぬ俗人でもあったはずのバッハ、一音入魂のラストシーン。 
 「演奏が終わっても拍手はするな」のお触れ書きの通り、至高の沈黙のなか、満員の聴衆は名演の余韻に浸ったのでありました。


ジョヴァンニ・ティエーボロが描いた処刑場のキリスト(1738年)
ヨハネ 

たまには外メシ

たまには外メシ
06 /16 2012


●泉南・田尻漁港 「漁業体験と海鮮BBQ」

 Nさんの案内で珍しい経験をしました。小さな漁船でカゴ漁と刺網漁を体験、とれた魚は即バーベキューなどで賞味。まさにとれとれの味です。料金6,300円は高いなあと思ってましたが、網やカゴの準備と片付けの作業の大変さを見ると、そういう思いは消えました。
 不振の沿岸漁業が生き延びるための副業みたいな観光ビジネスですが、参加した人の多くは、小さな魚一尾、粗末な食べ方できないとハンセーしたのでありました。当日はなんとか魚の種類、量とも満足できるものでしたが、運の悪い人(グループ)は獲物ゼロみたいな場面もありそう。


ゴム引きの前掛け、長靴にライフジャケットというスタイルで出港。ちっちゃい船だからよく揺れ、波しぶきがかかります。
田尻漁港


はじめにカゴ漁、次に刺し網を揚げます。網は長さが300mくらいあるので、交代で揚げます。クラゲやヒトデも多く、漁師がいちいち外してくれます。一番の獲物は大きなタコと黒鯛(30cm~)でした。ほかに、イカ、アナゴ、カレイ、カニ、など。仕掛けの割にはどうみても不漁で、これじゃ漁師さんはメシ食えないこと納得。
田尻



漁が終わったら、サービスで関空の着陸誘導灯下まで出向き、着陸シーンを見物させてくれます。
田尻



岸壁のすぐ横に100人くらい使えるBBQ席があります。黒鯛は半身を刺身に、半身は炭焼きで賞味。イカも刺身と炙りで。カレイとアナゴは天ぷらで食べました。調理は店でやってくれます。 タコは食べきれないので、分けて持ち帰りました。
田尻 


田尻 


田尻 


田尻 おわり 


田尻


■案内はこちら・・田尻漁業協同組合のHP
http://www.tajiriport.com/gyogyoutaiken.html

http://www.tajiriport.com/

プチ・ケチの研究

プチ・ケチの研究
06 /13 2012


●「蒲焼き」はうなぎに限定せよ

 年々うなぎが品薄になって、中国産の貧弱な蒲焼きでも1000円以上になりました。そこで、これはどないや!と、うなぎに見せかけた商品が「イワシの蒲焼き」です。タレの味やまぶし方をうなぎに似せて、せめて見た目だけでもうなぎ風にと、苦心の作です。値段は149円(二きれ入りで298円)ナリ。レンジでチンするだけで食べられます。味や食感は、100円くらいで売っているサンマの味付け缶詰と似ています。


ついでに言えば、同類の塩干モノに比べたら、焼く手間が省けるのはメリットであります。しかし、「イワシの蒲焼き」という商品名が気に入らない。貧しくてうなぎが買えないから、仕方なくこれで我慢する・・みたいな、貧乏人のヒガミ、劣等感を助長してしまうからです。器用な人は、これを食べながら、脳内ディスプレイにうなぎの蒲焼きを映しているかもしれないけど。ま、ここは素直に「タレつきイワシ」でええのでは、と思います。


そうでないと、たとえば、生活保護家庭でしょっちゅうこれを食卓に出していると、子供が「おかあちゃん、また蒲焼きなん、たまにはサンマも食べたいよう」などと不満をのべ、他人が聞いたら「○○さんとこ、毎日のように蒲焼き食べてはりまっせ。不正受給ちゃいまっか」と役所に密告するやも知れませぬ。清く、正しく生きるためにも「蒲焼き」はうなぎに限定するべきであります。


イワシの蒲焼き  

読書と音楽の愉しみ

読書感想文
06 /12 2012


●武良布枝著「ゲゲゲの女房」を読む

 漫画界の過激派、西原理恵子の本の次は、妖怪漫画の雄、水木しげるの女房が書いた夫婦愛物語であります。この本を下敷きに、同じタイトルでNHKの連続ドラマが放送されたので、ご存じの方が多いと思います。駄目男はテレビドラマは一回も見たことないので、出来映えがどうだったのか、さっぱり分かりません。


副題に「人生は・・終わりよければすべてよし」とあるように、この本の主題は、人生半ばの超貧乏物語にあると言えます。そこそこの安定した生活水準を維持しながらの半生では、どうにも退屈なストーリーになったに違いない。第一、本を書く気にならなかったと思います。


水木しげるが不遇な時代は、貸本のための作品を書いてる時代ですが、この貸本や貸本屋がふつうにあった時代を思い出せるのは、今なら65~70歳くらいの人が限界でせうか。60歳の人が子供の時分は、もうそんな商売は滅亡していたのでは、と思います。(記憶あいまいです)貸本屋は、廃業するか、古本屋へ転向していきました。


書いても書いても売れない・・のは現代でも同じで、先般紹介の西原理恵子だって同じ苦い境遇を経験しているし、今日でも売れない漫画家はゴマンといるに違いない。ほんと、外見の派手さにくらべ、食うや食わずのライターがうじゃうじゃいるのでせう。出版社へ日参という図式も同じかもしれない。
  水木夫妻は、貧乏のピーク時には、はいてる靴まで質にいれて下駄履きで暮らしたとか。なんのことはない、生活保護家庭の水準で貧しさに耐えた。河本準一の言う「貧乏」がいかにええ加減なものか、ハンセーしなさい。


 おお、と思ったのは、不遇時代にちょこちょこ手伝いに来た漫画家に、つげ義春がいたこと。著者が書くに、つげさんは、ふらりと現れ、飄然と消えてしまう人だったと。彼自身、妖怪みたいな人物だったらしい。むろん、赤貧、洗うがごとしの貧乏ぶりも似たようなものだった。但し、つげ義春は「積極的なまけ者」であった感が強い。


ただいま、水木しげる90歳、著者の布枝80歳。いろいろ苦労はあったものの、功成り名遂げて幸せな晩年です。作家としての成功だけでなく、ふるさと境港に記念館や「水木しげるロード」などできて観光客が大巾に増え、地域振興にもずいぶん貢献しています。そんなサクセスストーリーを陰で支えたゲゲゲの女房が、今や歴史遺産に思える「良妻賢母」タイプの地味な女性だった。漫画業界において、このような夫唱婦随カップルは、水木夫妻をもって絶滅すること、確定でありませう。(底本は2008年 実業之日本社発行)


■水木しげるのプロフィール
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E6%9C%A8%E3%81%97%E3%81%92%E3%82%8B


■水木プロダクション 公式サイト
http://www.mizukipro.com/


大活字本で読みました。22Pのでかい活字で編集されてるので、3冊にもなるけど、一日で読めます。価格 8760円(税別)という高価な本(住吉図書館で借用)
ゲゲゲの女房 本 

読書と音楽の愉しみ

読書感想文
06 /11 2012


●西原理恵子著 漫画「サイバラ茸」を読む

 5月31日に西原の自伝「この世で一番大事なカネの話」を紹介したあと、肝心のマンガを読まなきゃと図書館で借りました。
  いやもう・・実に、読みにくいのであります。原版よりサイズを縮小しているうえに、文字が全部手書き、それもヘタクソな字だから苦労します。なかなかページが進まない。


しかし、オモロイ。オモロイ漫画家として、女性ではナンバーワンでせう。男でもためらうような卑猥な画や文を何気に書いて知らん顔。このハチャメチャぶり、誰かに似てるなあ・・と記憶をたどって思い出したのが、谷岡ヤスジ。あれの女性版ですね。(ご本人は意識してるのでせうか)
 ”全国的に、アサ~” ”鼻血がブー”のセンスが乗り移ってるみたい。谷岡ヤスジが意外に短命だったので、ここはサイバラ先生に頑張ってもらって、末永く漫画界を支えてほしいものであります。しかし、いつまでこんな過激な漫画を画き続けられるのか、ちょっと心配。まあるくなったら、オシマイです。(2009年11月 講談社発行)


余白には文字がぎっしり・・
サイバラ本 


サイバラ本 


サイバラ 

 dameo

■10年続けた<快道ウオーキング>を改題しました。
■《手づくり本》の研究は、大事なことは紙に記録しようという、アナログ爺のレジスタンスです。お問い合わせは【拍手ボタン】押してコメント欄からどうぞ。内容は非公開です。
■下記のカテゴリーが趣味をあらわしています。
■ニックネームはdameo(丸出駄目男)です。
■1939年大阪生まれ