読書と音楽の愉しみ
読書感想文
●古賀茂明著「官僚の責任」を読む
著者、古賀氏は、この本を書き上げる直前、退職勧奨の通告を受けた。退職勧奨とは霞ヶ関用語であるらしく、民間なら「解雇通知」である。要するにクビ。なんでクビなのかは説明なし、とにかく辞めてくれと。しかし、本書を読めば、こりゃクビだわな、と誰でも理解できる。現役の官僚でありながら、官僚の世界をケチョンケチョンにくさしてるのだから。
1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒、通産省(現在の経産省)へ入り・・サラリーマンとしては最高のエリートコースを歩んだが、いろんな仕事をしているうちに、官僚の腐敗、堕落ぶりを見てだんだんアンチの考えが生まれ、実務においても役人らしくない発想の改革案、新提案をつぎつぎ出し、次第に「イヤな奴」と疎まれるようになった。
民主党政権になっても嫌われぶりは変わらず、役人の天下りを批判して予算委員会の席上で仙谷官房長官(当時)から恫喝された。皮肉なことに、この辺りから「古賀茂明」サンは有名になっていく。以後、ブレずに官僚批判一筋、クビになるのは当たり前です。ハハハ。
霞ヶ関の役人は何を生きがいに仕事をしているか。一に「私益」二に「省益」三に「国益」。国家国民のためではなく、自分と組織の利益のために働くのが基本姿勢。シモジモの民がどんなに辛い目に会おうと、わしゃ知らん。極端にいえば、こーゆーあんばいであります。
いちばん力を入れて書いてるのは「利権」と「天下り先の確保」で、実際、この仕事?に実績を作った人が出世する。いかに巧妙に天下り先をこしらえるか、いろんな手法が説明してある。東大法学部卒の明晰な頭脳は、おおむね、このために発揮されるのであります。嗚呼、もったいない。
しかし、霞ヶ関の省庁のビルは、深夜まで煌々と灯りがついていて、皆さん残業で頑張ってると思うのですが・・。実は、夕方から二時間くらい上司がみんなを飲み屋に誘って時間を潰し、やおら戻って「残業」をする。仕事の中身や効率より、職場での滞在時間の長さが評価されるのだ。そういえば、数年前だったか、大蔵省で「ノーパンしゃぶしゃぶ」スキャンダルってのもありましたなあ。そんな仕事ぶりでも、50才のノンキャリアで1000万の年収が得られる。古賀氏のような、55才のキャリア組なら1500万くらいの年収がある。
新しい首相、野田佳彦は財務省の忠犬と陰口される「官僚の味方」。役人達はバンザイ気分でありませう。一年もつかどうか、早くも危惧の声が上がっている。(2011年7月発行 PHP新書)