●若宮健著「なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか」を読む
関東のパチンコ業界は、震災による電力不足という「想定外」の問題で、しんどい局面に立たされている。石原都知事は「やりたければ深夜にやれ」と明快にアンチ・パチンコの姿勢を示している。
韓国は2006年、国会で与野党一致による議決をもとにパチンコを全廃、禁止した。法律によってパチンコを社会から追放した。この事実を日本のマスコミはほとんど報道しなかった。なぜか、といえば、新聞社やテレビ局にとって、パチンコ業界は有力なスポンサーだからである。今でも、パチンコが引き起こす様々な害毒について、マスコミは知らん顔をしている。
では、韓国ではどうしてかくも潔くパチンコを禁止できたのだろうか。家庭崩壊や犯罪増加など、パチンコが生む社会悪の状況は日本と変わらなかったのに、韓国は潔く廃止し、日本では相変わらずのさばっている。簡単にまとめると、以下のようになる。
韓国でパチンコが廃止になった理由
■差別意識の強い韓国では、パチンコは「下層階級の娯楽」として認識され、日本のように広く支持されていなかった。
■歴史が浅く、業者の規模が小さく、日本の「マルハン」のような大企業に育っていなかった。(小規模の個人経営がほとんどだった)
■国会議員や官界との癒着力が小さく、業界に政界を動かすほどのパワーがなかった。(一部には、贈収賄疑惑の事件も起きているが)
■日本と違い、マスコミがパチンコ業界を擁護する必要がなかった。
■パチンコ廃止について、一般国民に反対する意見が少なかった。
なお、本書によると、韓国のパチンコは2000年ごろから流行し、ピーク時は店舗数1万5000軒、年商3兆円に成長した。日本の売り上げのピークは1997年ごろ、年商30兆円。規模が一桁違う。
法律で営業禁止にしただけでなく、パチンコ台そのものを没収、処分して 営業再開できないようにした。これで韓国では「全滅」したことになるが、ヤミでの賭博ビジネスが流行る懸念は残っている。
さて、著者の言いたいことは、なぜ、日本ではパチンコがこんなにのさばってるか、ということであります。これについては、駄目男も数年前のホームページ時代から散々書いているので詳しく書きたくない。で、簡単にまとめると、これが韓国の廃止事情のほぼ裏返しになるところが興味深い。
日本でパチンコが廃れない理由
●日本では「下層階級の娯楽」という差別意識がひくく、ファンの巾が広い。大阪市長の平松サンもパチンコファンだそうだ。
●国会議員や警察官僚との癒着が強力で、パチンコの廃止に関しては全く期待できない。「国民の生活が第一」と唱える政党に「パチンコ業界が第一」をうたう国会議員が三十数名もいる。業界を取り締まる役目の警察官僚がパチンコ業界へ天下りするのが常識になっている。
●パチンコ店や台のメーカーが、新聞やテレビの有力スポンサーになり、パチンコ 批判の言論を封じている。
自分の考えを言えば、動機、理由を問わず、パチンコファンは「知的下層階級」の人間である。大阪市長、平松サンも同類。話をふくらませて、公営カジノ建設を唱える橋下知事も、このテーマに関しては下層階級である。
では、世の中に一切のギャンブルの存在を認めないのか、といえば、むろん、聖人君子ではないから、そんなカタイことは言いません。競馬や宝くじ(はギャンブル?)などはかまわない。ギャンブルの全面禁止はアメリカの「禁酒法」の失敗と同じで、現実的ではない。
近年、疑惑のマナコで見ているのは、とんでもない児童虐待事件の多発。我が子を虐待する、殺すの裏側にパチンコがあるのでは、という疑問である。負け続けた怒りを無抵抗の子供にぶつけてるのではないか。報道では常にあいまいなことしか伝えないが、仮に、パチンコ狂いが原因であったとしても、業界の味方である警察は情報を隠し、まれに情報を公開しても、マスコミが隠蔽する。親の多くが定職についていないような状況から察しても、パチンコが幼児や児童虐待の原因になってる可能性は強い。
著者の反パチンコの情熱はわかるけど、できれば写真や図表をたくさん使って、ヴィジュアルな表現もしてほしかった。もしや、時間不足だったのかもしれないが・・。次回はぜひ日本での「パチンコ撲滅論」を書いてほしい。しかし、暗殺されるリスクを考えると、ビビッてしまうでせうね。
(祥伝社新書 2010年12月発行 760円+税)